「簿記1級はやめとけ」と言われるのはなぜ?
日商簿記1級は、難易度の高い資格として知られており、取得することで高い評価を得られる資格です。
しかし、一部には取得を目指すのは「やめとけ」という声があります。
そこで今回は、なぜ簿記1級は「やめとけ」と言われるのか、その背景を考察しました。
また、合わせて簿記1級に関する基本情報もまとめましたので、取得を考えている方は参考にしてみてください。
なぜ簿記1級はやめとけと言われるのか
簿記1級はやめとけと言われる理由としては、以下のことが考えられます。
合格率が10%前後と低い
簿記1級の合格率は10%程度と言われており、合格者数としては毎回1,000名程度の狭き門となっています。
簿記1級は、2級や3級を勉強した人がステップアップとして受けることから、勉強してきている人でも合格率が低いことも懸念事項の一つと言えるでしょう。
そのため、難易度が高く合格率が低いことから「簿記1級はやめとけ」と言われていることが考えられます。
ただし、その狭き門を潜り抜け合格できた人は、高度な専門知識を持っていることの証明になります。
知識に対して自信が持てる上に、取得者が少ない分、希少性が高いというメリットがあります。
未経験で経理を目指す場合は2級でも十分
未経験から経理を目指す場合、簿記1級を持っていなくても、2級を持っていれば評価される可能性が高いと言えます。
人によっては、難易度の高い1級を無理に取得しなくても、1級で十分な場合もあることから「簿記1級はやめとけ」と言う人もいます。
確かに未経験の経理求人には、簿記2級が応募条件になっていることは多いですが、簿記1級が応募条件になっていることは極めて少ないです。
簿記1級は、経理に転職して経験を積んだ上で取得を目指したとしても遅いということはありません。
自分の状況や希望に合わせて最適の資格を取得することが効果的と言えます。
簿記1級取得にかかる勉強時間
簿記1級の勉強時間は、独学であれば1,000~2,000時間、通学・通信講座の場合でも500~800時間程度と言われています。
難易度も高いので、勉強期間は10ヶ月以上かかることが想定されます。
試験日も考慮して計画的に勉強を進めることがポイントとなります。
簿記2級、3級の勉強時間と比較すると違いがよりわかりやすいでしょう。
簿記2級の勉強時間は独学の場合は250~350時間程度、通学・通信講座の場合は150~250時間程度と言われています。
必要な勉強期間は、4~6カ月程度と計算されます。
簿記3級の場合は、合計100時間程度であり、1日に3~4時間勉強するなら1カ月程度で学ぶことができます。
いかがでしょうか?
簿記2級や3級と比べると、1級の取得難易度が際立ちます。
自分の実力や捻出できる勉強時間などを考慮して、無理のないところから取得を目指していくことをおすすめします。
なお、簿記1級は独学でも目指すことができる資格とは言われていますが、最短で資格取得を目指したい場合は、通学・通信講座の利用を検討視してみることをおすすめします。
長期的な勉強が必要ですので、しっかりと効率よく知識を吸収できる通学・通信講座の利用は有効な手段と言えます。
簿記1級取得者の平均年収
一概には言えませんが、簿記1級を取得していると高度な知識を持っていることの証明になります。
そのため、一般的に中小企業より給与水準が高い大手企業に転職できる可能性が高まり、年収を大幅にアップさせられる可能性があります。
国税庁「平成29年度民間給与実態統計調査」によれば、資本金10億円以上の大企業の経理として働いた場合の年収は590万円、資本金1億円以下の企業の場合は年収400万円前後というデータがあります。
もちろん経験年数やポジションによっても変化しますので、経験豊富でマネジメントスキルなどもある簿記1級を持っている経理の場合は、さらに高い年収を期待することもできるでしょう。
また、一般的に地方より首都圏の方が、年収が高い傾向があります。
会社の規模と合わせて立地にも着目すると年収アップが期待できやすいでしょう。
簿記1級取得後の主な就職先
簿記1級取得後の主な就職先としては主に以下が挙げられます。
大手企業の経理部門
簿記1級が必須という求人は少ないものですが、簿記1級を持っていると転職の際に有効なアピールポイントとなります。
特に、人気の高い大手企業の場合は、数多い応募者の中でも目立つことが考えられますので、大きな武器になる可能性が考えられるでしょう。
応募できる求人数も増えますので、簿記1級を取得していれば大手企業の経理部門に転職できる可能性があると言えます。
また、中小企業でもより条件の良い企業に転職できる場合もあります。
難易度の高い資格を取得したのですから、積極的に活かす道を検討してみることがおすすめと言えます。
会計事務所
会計事務所の求人は、簿記2級以上を条件にしている場合は多いと言えます。
もちろん、簿記1級を取得していれば会計事務所に転職できる可能性はあります。
会計事務所の場合は、簿記の資格の他に税理士や公認会計士の資格を持っていると優遇されやすいと考えられます。
自分のキャリアプランとして、簿記1級を取得した後に、税理士や公認会計士の取得を目指している場合などは、会計事務所で身近に該当の資格を持っている人たちと一緒に仕事をしてみるのも良い勉強になると言えるでしょう。
例えば税理士の場合は、取得に際して2年以上の実務経験が必要となります。
税理士事務所で働いている期間は実務経験としてカウントされますので、税理士の取得を考えている人には有効なキャリアパスと言えます。
コンサルティングファーム
コンサルティング業務自体に資格は必要ありませんが、簿記1級の知識はコンサルティング業務に役立てることができますので、コンサルティングファームへの転職を視野にいれることも良いでしょう。
取得した知識を高度なコンサル業務で役立てることができます。
また、年収アップも期待できる場合がありますので、年収を重視される方もチャレンジしてみる価値がある就職先と言えます。
なお、資格は転職時にアピールする時に有効ですが、資格だけに頼りすぎないように注意することもポイントとなります。
これまでの経験や資格を活かして、どのように企業に貢献することができるのか、総合的にアピールすると良いでしょう。
スキルを具体的にまとめておき、しっかりと数値化や言語化してアピールすることも大切なポイントと言えます。
簿記1級取得で応募できる求人例
金融総合グループの経理(単体決算・税務担当)スタッフ~管理職
仕事内容 |
ホールディングス本体及び中間持ち株会社の単体決算、税務業務全般を担当しているチームに所属いただき、単体決算・税務業務を中心に、一部投資案件のスキーム作りなどにも従事ただきます。 |
必要な経験・能力 |
・事業会社や税理士法人、会計事務所などでの税務業務経験 ・会計士/税理士/USCPA/簿記1級のいずれかをお持ちの方 |
想定年収 |
400万円 ~ 950万円 |
東証プライム上場企業の経理
仕事内容 |
連結決算業務などの担当 |
必要な経験・能力 |
<必須> 連結決算実務経験/大卒以上かつ上場会社での勤務経験3年以上 <歓迎> 日商簿記1級保有者/内部統制業務経験 |
想定年収 |
400万円 ~ 600万円 |
まとめ
簿記資格として一般的な3級や2級は未経験者が経理への足掛かりとして取得するケースが多いと言えます。
一方で簿記1級は取得することで、企業からも簿記のスペシャリストとして評価される可能性が高まります。
経理としてさらなるスキルを身につけたい人にとっては損のない資格ですが、転職の為に取得する必要性があまりないことが「簿記1級はやめとけ」と言われる理由でしょう。
しかし、大手企業の経理への転職や税理士試験の受験資格をして活かすことは出来ますので、自身のキャリアプランに合わせて簿記1級の資格取得を検討すると良いでしょう。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、飲料メーカー営業、学習塾の教室運営を経て19年MS-Japanに入社。キャリアアドバイザーとして企業管理部門、会計事務所などの士業界の幅広い年齢層の転職支援を担当。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 公認会計士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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