企業内弁護士になるには?必要なスキルや転職事例・求人例など



弁護士にとって、「企業内弁護士」はワークライフバランスの充実と安定収入を実現できる魅力的な選択肢の一つです。
一方で、法律事務所の勤務経験のみの弁護士は不安を感じている人も多いでしょう。
企業内弁護士への転職を成功させるには、そもそも企業内弁護士がどのような立場で仕事をしているのか理解し、必要な資格やスキルなど、情報収集を徹底することが重要です。
この記事では、企業内弁護士になるための方法について、転職事例・求人例などに触れつつ解説します。
企業内弁護士(インハウスローヤー)とは
企業内弁護士(インハウスローヤー)はどのような仕事を担う職種なのか、企業内でどのような立ち位置にいるのか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
まずは、企業内弁護士の仕事内容・ニーズについて解説します。
企業内弁護士の仕事内容
企業内弁護士の仕事を一言でまとめるのは難しく、あえてまとめるなら「事業会社の従業員として雇われ、企業法務に携わる弁護士」となるでしょう。
つまり、仕事内容は働く企業によって様々であり、任される仕事も以下のように多岐にわたります。
- ・契約書審査
- ・取引先・行政当局との交渉担当
- ・コンプライアンス体制の策定や実施、監視など
- ・訴訟管理
- ・その他、法務部が担当する業務全般
顧問弁護士のような立ち位置ではなく、従業員レベルで自社の法的利益を最大化するために動く立場といえます。
企業内弁護士のニーズ
企業内弁護士のニーズは年々高まりを見せており、日本組織内弁護士協会(JILA)の「企業内弁護士数の推移」によると、2001年はわずか66人だった企業内弁護士の数は、2024年には3,391人にまで増加しています。
企業内弁護士の所属先企業は製造業が多く、次いで金融業や銀行・保険業、卸売・小売業などが比較的多い傾向です。
その背景には、法的リスクの拡大と、弁護士人口の増加があると考えられています。
政府による各種規制緩和が推進されたことで、ビジネスチャンスが増えた半面、同時に企業のコンプライアンス強化が求められるようになりました。また、大企業・中小企業を問わずグローバル化を進める企業が増え、法務面でのリスクが複雑かつ多様化しています。
加えて、司法制度改革の影響から弁護士人口が増加したことで、「法律事務所以外のキャリア」を選択する司法試験合格者が増加しました。
その結果、企業内弁護士のニーズが企業・弁護士ともに高まりを見せているのです。
【参考】
日本弁護士連合会「企業内弁護士とは」
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企業内弁護士に必要なスキル
弁護士が企業内弁護士として働くにあたっては、次のようなスキルが求められます。
社内外の調整能力
企業内弁護士は、法律事務所で働く弁護士と異なり、所属している企業の企業法務に従事します。
法的な判断だけでなく、ビジネス上の決断を求められる場面も多く、他部署の責任者や取引先とシビアな交渉をすることもあるでしょう。
また、企業内弁護士の重要なミッションは、ビジネス上の利益と法律との間で、法に抵触しない範囲で最大限の利益を実現すべく社内外の調整をすることです。
よって、周囲と歩調を合わせつつ、自分の意見を述べられる、高いコミュニケーション能力・交渉スキルが求められます。
ビジネスレベルの英語力
企業内弁護士が働く企業は、製造業や金融業など海外企業との取引が頻発しやすい業種や、海外展開するような大手企業が多く見られます。
必然的に、そのような環境で働く企業内弁護士も一定の英語力が求められるでしょう。
所属企業の事業内容や担当業務の内容によって求められる英語力は異なりますが、最低でもメール・チャットのやり取りや英文契約書の理解に支障がないレベルの英語力が求められると考えられます。
TOEICのスコアで英語力を可視化しておくことで、応募書類で英語力をアピールすることができます。
例えば、TOEIC600点以上(英検2級以上相当)で英文書類の作成や簡単なやりとりができるレベル、TOEIC800点以上(英検準1級以上相当)取得していれば、英語での直接交渉を行うことができるレベルだと見なされます。
マネジメントの経験・能力
求人の内容にもよりますが、企業が企業内弁護士を採用する目的の一つとして、法務部を立ち上げる際の管理職候補であるケースが考えられます。
よって、法律事務所やそれ以前の勤務先でマネジメントの経験を積んだことがある人は、企業内弁護士の求人に応募できるチャンスが増える可能性があります。
企業内弁護士になる方法
企業内弁護士として働くためには、弁護士業務の中でも、特に企業法務やビジネス関連の経験が重宝されます。
そのため、現在法律事務所で勤務している場合は、次のような点を念頭に置いて転職活動の準備を進めることが大切です。
金融・知的財産の専門性を高める
企業が弁護士を雇用する理由の一つに、金融・知的財産に関する法的知識が豊富な人材の確保が挙げられます。
近年、金融商品や知的財産に関するニーズは多様化し、新しい商材を取り扱うケースも増加傾向です。金融・知的財産の専門性を高めておくことで、企業内弁護士の転職市場において、市場価値を上げることができるでしょう。また、転職後に必要な情報を迅速キャッチアップできる土台となり、即戦力としても評価されます。
企業法務経験を積む
現職で担当案件を選べるのであれば、企業法務案件を積極的に担当することがおすすめです。
社外の立場から企業の法的トラブルに対処する顧問弁護士などで企業法務に携わることで、企業内弁護士への転職で強みとなる経験を積むことができます。
また、現職が一般民事系法律事務所で、企業法務に携わる機会がない場合は、一度企業法務系法律事務所へ転職した後に企業内弁護士を目指す方法もあるでしょう。
転職に年齢制限のない弁護士だからこそ、将来を見据えたキャリアプランを立てることが重要です。
弁護士と法務に強い転職エージェントを利用する
企業内弁護士に転職するにあたり、必要な経験を備えている人材であっても、限られた期間に自力で条件に合う求人を探し出すのは至難の業です。また、弁護士は現職が激務で転職活動に時間が割けない人も多いでしょう。
そこでおすすめの転職活動方法が、弁護士・法務の求人に強い転職エージェントの利用です。転職エージェントでは、忙しい弁護士に代わって、希望を満たす求人の検索や応募書類の作成サポート、面接日程の調整、面接対策、内定後の条件交渉まで、転職活動のトータルサポートを行っています。
自分のキャリアプランや応募先との相性を総合的に勘案し、納得できる転職先を見つけやすくなるでしょう。
法律事務所から企業内弁護士へ転職した事例
弊社MS-Japanは管理部門・士業特化型転職エージェント「MS Agent」を運営しています。
ここでは、「MS Agent」をご利用いただき、法律事務所から企業内弁護士へ転職された事例の一部を抜粋してご紹介します。
民事系法律事務所から大手メーカーへ転職した事例
Oさんは、地方の民事系法律事務所で交通事故の法律相談を中心に幅広い業務に携わっていましたが、弁護士としての知見を広めるため、首都圏の企業内弁護士への転職を決意されました。
地方在住というハンデと企業法務経験不足という弱みによって、書類選考見送りが続く中、、ハイポテンシャルであることや、コミュニケーション力を評価され、最終面接まで進むことができました。
Oさんは最終面接に備え、応募先企業の事業内容と仕事内容、現職との比較、弊社からの情報提供、インハウス関連の文献チェックなど、自身の経歴で具体的にどのような点がギャップとなっているのかを徹底的に調べました。その情熱やチャレンジ精神を評価され、無事に内定獲得に成功しました。
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ブティック系法律事務所から東証プライム上場グループの専門商社へ転職した事例
Nさんは、大手法律事務所から国際案件に強いブティック系法律事務所に転職された後、クロスボーダーM&Aなど多様なご経験をされ、よりダイナミックな仕事にチャレンジするため転職活動をスタートされました。
転職活動当初は総合商社を目指していましたが、選考ハードルを考慮して総合商社グループ企業や専門商社まで視野を広げて応募していただき、東証プライム上場グループの専門商社から企業内弁護士の内定を勝ち取ることに成功しました。
Nさんは、希望業界の視野を広げ、ご自身の希少価値が最も高く評価される企業を見極めることで、年収アップと企業内弁護士へのキャリアチェンジを果たすことができました。
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大手渉外法律事務所から大手グローバル企業へ転職した事例
Fさんは、大手渉外法律事務所で国内外の幅広い企業法務経験を積み、様々なクライアントと携わる内、組織内で企業内弁護士として当事者意識をもって働きたいと考えるようになり、転職活動をスタートしました。
当初Fさんの転職活動が難航していたため、MS Agentから自身の強みをしっかりと活かせる求人に絞って応募することをお勧めしました。Fさんの強みである「ビジネスレベルの英語力」と「製薬業界経験」を活かせる製薬企業を中心に応募し、見事年収を維持しての転職に成功されています。
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企業内弁護士の求人例
最後に、「MS Agent」で取り扱う企業内弁護士の求人例をご紹介します。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。
【プライム上場】建物管理を手掛けるホールディングス企業※週1・2在宅勤務
仕事内容 |
・契約法務(契約書チェック・作成、※英文契約は1割程度) ・社内法律相談対応 ・弁護士事務所対応 ・訴訟対応 ・コンプライアンス関連業務 |
必要な経験・能力 |
<必須> ・弁護士資格(※企業法務未経験者も歓迎) |
想定年収 |
500万円 ~ 800万円 |
デベロッパー業界大手企業
仕事内容 |
・本社、グループ各社の法律相談 ・コンプライアンスチェック ・契約書のレビュー、チェック ・顧問弁護士や事業部門との打合せや調整 ・予防法務(各事業部との法律相談を実施。相談しやすい法務課を目指しています) ・トラブル解決 など |
必要な経験・能力 |
弁護士資格(※法律事務所出身者も歓迎) |
想定年収 |
600万円 ~ 1,000万円 |
名古屋の東証プライム上場メーカー
仕事内容 |
・顧問弁護士との橋渡し並びに法務実務(訴訟案件:人事労務、債権回収、契約書審査、取引先倒産時の法的対応) ・公益通報窓口の担当やコンプライアンス推進活動 ・法律相談担当 ・コーポレートガバナンス報告書(日本語版+英語版)の作成 * 株主総会の法律面監修 ・国内外M&A契約実務 |
必要な経験・能力 |
・弁護士資格 |
想定年収 |
600万円 ~ 1,500万円 |
まとめ
企業内弁護士は、雇用された企業の従業員として、主に企業法務全般に携わる職種です。
2001年時点ではごくわずかだった企業内弁護士は、年々その数が増えており、企業・弁護士業界それぞれのニーズがマッチしていると考えられるでしょう。
企業内弁護士は、法律事務所と異なり、組織の一員として動くことが求められ、協調性やマネジメント能力、英語力が問われる求人も少なくありません。
転職を成功させるためには、自分の強みを正しく理解して、それを最大限生かせる求人に応募することが大切です。
- #企業内弁護士
- #インハウス弁護士
- #インハウス会計士


この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、ウェディングプランナー、業界大手で求人広告の企画提案営業を経て、MS-Japanへ入社。
企業担当のリクルーティングアドバイザーを経験した後、現在は転職を考えられている方のキャリアアドバイザーとして、若手ポテンシャル層~シニアベテラン層まで多くの方の転職活動のサポートをしています。
人材業界での経験も長くなり、いつまでも誰かの記憶に残る仕事をしていたいと思っています。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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