司法書士は就職に有利?年代別就職市場や就職活動の流れなど



司法書士を目指す中で、「司法書士の資格は就職や転職に有利なのか」「実務未経験でも就職できるのか」という疑問を持つ方も多いでしょう。
司法書士資格を取得後のキャリアについて、年齢や保有経験・スキルに応じた選択肢を把握しておくことも重要です。
本記事では、司法書士資格について、試験の難易度や仕事内容、年代別の就職市場など、詳しく解説します。
司法書士とは?
司法書士は、法律にかかわる書類作成や手続きを専門的に行う法律家です。
まずは、その役割と仕事内容を整理してみましょう。
司法書士の役割
法律に精通する司法書士の主な役割は、国家資格に裏付けられた専門知識を活かし、法的に必要な手続きや助言を行うことです。
身近な法律アドバイザーとして、法的課題やトラブルを抱えた人が不利益を被らないよう、解決に導くことが求められます。
担当する顧客によって役割が異なり、個人に対しては、相続や成年後見などの法的手続きを支援し、訴訟代理も含めて個人の権利と財産を保護します。
法人には、会社設立や役員変更の登記手続きを代行し、企業法務に関する助言を提供します。
社会全体にとっては、法教育の普及や多重債務者の救済、法的相談などを通じて法治社会の健全性に寄与します。
司法書士の仕事内容
次に、司法書士の仕事内容について解説します。
登記・供託手続きの代理
不動産や法人の登記手続きを代理で行うことは、司法書士の主要な業務です。家や土地を購入したり、新しい会社を設立したりする際に、登記手続きを通じて権利関係を公に示します。
供託業務も司法書士が携わる主な仕事であり、有価証券や金銭を供託所に預け、分配する手続きを行います。
書類作成
法律関連書類の作成や法務局、裁判所、検察庁への提出も司法書士の仕事です。これには不動産取引や商業登記、裁判関連の書類などが含まれます。
法律相談
依頼者から法律に関する相談を受け、アドバイスを提供することも司法書士の仕事です。訴額が140万円以下の簡易裁判で訴訟代理人として活動できます。
成年後見業務
判断能力が不十分な人の財産を保護するため、本人に代わり財産管理や契約を行います。高齢化社会の進展に伴い、司法書士による成年後見業務の需要は増加傾向です。
相続業務
相続に必要な名義変更の手続きや遺産分割、相続税に関する助言も司法書士の業務の一環です。正式な遺言書の作成支援や、遺言の執行を担うこともあります。
企業法務のコンサルティング
企業の法務アドバイザーとして、企業法務における相談やコンサルティングにも携わります。特定の企業に勤務し、法知識を活かして企業活動をサポートする司法書士も珍しくありません。
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【年代別】司法書士の就職市場
司法書士の仕事は、個人や社会にとって役立つものではありますが、司法書士資格は就職・転職に有利に働くのでしょう。
ここでは、司法書士の就職市場を年代別に詳しく解説します。
司法書士は売り手市場
まず、就職市場における司法書士資格の評価について、疑問を解決していきましょう。
「司法書士資格は就職や転職に有利なのか?」という疑問に対して、その答えは「確実に有利」と言えるでしょう。
なぜなら、他の士業に比べて合格者数が圧倒的に少なく、司法書士資格保有者自体が不足しているからです。
つまり、司法書士が求められる企業や業界では売り手市場であり、司法書士資格保有者は重宝されるでしょう。
「実務未経験でも司法書士として就職できるのか?」という疑問に対しては、「就職可能」と回答できます。
前述した通り、資格保有者が少なく、売り手市場である司法書士は、実務未経験でも就職しやすい職種です。
ただし、選考で経験者と競合する場合は、未経験者が不利になるでしょう。
対策として、応募できる選択肢を増やすために、求人の多い大都市や栄えている地域での就職活動がおすすめです。
また、士業の転職実績が豊富な「転職エージェント」のサポートを利用することも賢明な手段です。
20代・30代が有利
20代・30代が就職や転職に有利であることは、司法書士においても例外ではありません。
特に、不動産決済や企業法務を主に扱う事務所で、20代・30代の司法書士が歓迎される傾向にあります。
不動産売買の決済は手続きが複雑で、体力的負担を伴うため、若手層のニーズが高い傾向です。
企業法務では、新たに直面する法的課題に対して、時流を考慮した新しい視点での助言が求められるため、柔軟性の高い20代・30代は重宝されるでしょう。
合格者の少ない司法書士試験に合格したということは、若くして一定の法律知識を持っている証明になり、書類選考でも高く評価されます。
また、将来独立開業を目指す上でも、20代・30代で司法書士資格を取得しておくことが有利です。
登記業務を通じて出会う不動産や銀行の担当者は同世代が多く、年が近いほうが人脈を築きやすくなります。
40代以降でも十分転職可能
司法書士に求められるのは若さだけではありません。業務によっては、経験値の高い司法書士が好まれるケースもあります。
特に、成年後見業務と相続業務は、40代以降の司法書士に適した業務です。
成年後見人として選任される司法書士は、被後見人の財産管理や身上保護という重要な役割を担います。
親族から見れば、若い司法書士よりも、社会経験が豊富な年齢層の司法書士の方が、安心して財産管理を任せられるでしょう。
高齢者が中心となる相続業務においても、経験と信頼性が求められる点でそれは同じです。
また、就職・転職市場の傾向をみても、40代以降の年齢で司法書士として就職・転職を遂げることは十分可能です。
法務省は令和5年度における司法書士試験合格者の平均年齢が「41.14歳」であると公表しており、実際に40代・50代から司法書士として働くケースも多いことから、40代以降のニーズや働き口は十分にあると考えられます。
司法書士の就職・転職先
司法書士資格を取得した場合、どのようなキャリアがあるのでしょうか。
ここでは、司法書士として活躍できる就職・転職先の候補をご紹介します。
司法書士事務所
司法書士資格が活かせる就職先として、最もポピュラーな選択肢が司法書士事務所です。
以下に、事務所の得意分野別にご紹介します。
不動産登記が中心の事務所
不動産に関連した契約や権利の登記、譲渡などが主な業務です。不動産登記は司法書士の基本業務であり、ファーストキャリアとしてふさわしい職場だと言えるでしょう。
ただし、不動産のみを取り扱う事務所では決済業務で多忙になりやすく、特に月末は残業が多く発生する傾向があります。
商業登記が中心の事務所
商業登記では、個人事業主や法人の事業設立、変更、解散に携わります。商業登記は企業法務の知識も関連するため、次のキャリアを目指す上でも有用です。
残業が少なめでワークライフバランスを実現しやすいことから、近年人気が高まり、競争倍率の高い就職先となっています。
信託業務が中心の事務所
民事信託では、個人の財産の管理や支援に携わります。
財産管理や相続に関する法的なアドバイスと手続きを行い、高齢化が進む現代社会では今後も需要の高まりが見込まれる業務です。
債務整理が中心の事務所
債務者の代理人として、交渉の代行や個人再生・破産手続きに携わります。
業務が債務整理のみになることもありますが、司法書士のキャリアとして貴重な経験になるでしょう。
幅広い業務を請負う事務所
請負う業務の範囲が広く、さまざまな経験を積む機会に恵まれます。司法書士として幅広い知識とスキルが身につけられる点が魅力です。
一般企業
司法書士が一般企業の法務部門で勤める場合、契約管理やリーガルコンプライアンス、紛争解決など、幅広い法務業務を担います。
法務部門のある企業は大手が多く、司法書士事務所よりも給与や福利厚生などの待遇面が優れていることが多いでしょう。また、残業も少ない傾向があり、ワークライフバランスを実現したい方におすすめの就職先です。
不動産関連企業
司法書士は不動産に関する法律知識が豊富であるため、不動産関連企業の管理部門・事務部門でも高く評価されます。
不動産関連企業の年収は一般的な司法書士事務所と比較して高めの傾向があるため、年収面を重視する方におすすめの選択肢です。
合同事務所、その他士業事務所
弁護士や税理士、公認会計士が所属する合同事務所や、弁護士事務所などの特定の士業事務所も司法書士の就職先・転職先に含まれます。
法的サービスを連携して取り組む面白さがあり、他の専門家から影響を受けてスキルの幅を広げることができるでしょう。
司法書士業務だけでなく幅広い経験を積みたい方や、他の士業資格取得に興味のある方は、検討してみるとよいでしょう。
独立開業
スキルを磨いて人脈を広げ、自身の事務所を開業することも司法書士として可能なキャリアです。一般的に「司法書士は独立開業しやすい」と言われており、実際にキャリアの最終目標として掲げている方は少なくありません。
実力次第では高収入も見込めますが、まずは事務所や企業で経験を積むことが大切です。司法書士としての能力はもちろん営業スキルや集客力をしっかりと養い、万全の準備を整えて独立開業を目指しましょう。
司法書士の就職・転職活動の流れ
司法書士の就職・転職活動は、基本的には一般的な職種の就職・転職活動と同様です。
まずは求人探しから始め、気になる求人が見つかったら、履歴書・職務経歴書を作成して応募し、複数回の面接を経て内定を獲得できます。
ただし、個人で経営している小規模な司法書士事務所であれば、書類選考等がなく、一度の面接でそのまま採用となるケースも少なくありません。一方、一般企業の場合は事前の書類審査や面接のほか、企業によっては筆記試験や集団面接、グループディスカッションなどが行われる場合もあります。
司法書士求人への応募方法
司法書士求人への応募は、主に以下の方法で行うとよいでしょう。
- ・転職サイトに登録し、自分で求人検索・応募する
- ・転職エージェントに登録し、キャリアアドバイザーから紹介された求人に応募する
- ・管轄の司法書士会の求人情報に応募する
- ・ハローワークが提供する求人情報に応募する
- ・司法書士事務所の採用説明会等に参加して応募する
- ・事務所や企業のホームページなどから直接応募する
司法書士として転職を目指す場合、転職エージェントの利用がおすすめです。一般的な転職サイトは、司法書士求人の数が少ない可能性があります。士業や法務に特化した転職エージェントであれば、司法書士を対象とした求人の数が多く、幅広い選択肢から求人を選ぶことができるでしょう。
また、転職エージェントでは応募書類の添削や面接対策などの転職サポートも提供しているため、自分ひとりで転職活動を進めるよりも、効率的に自信を持って選考に臨めるでしょう。
司法書士の就職・転職活動に適した時期
司法書士の求人は、司法書士合格発表後である10月~年末年始にかけて数が増える傾向があります。そのため、司法書士試験に合格したらすぐに就職・転職活動を始めることがポイントです。
可能であれば、試験合格前に「司法書士補助者」として司法書士事務所での勤務経験を積んでおくとよいでしょう。司法書士補助者とは司法書士のサポートをする仕事で、具体的には来客・電話対応や書類作成補助などの事務作業全般を行います。
常に一定の求人数があることから仕事を見つけやすく、必要な資格等もないため誰でもチャレンジ可能です。
司法書士補助者として実際の現場を体験することで、司法書士の専門知識を自然と習得できます。
そこでの経験は司法書士試験に大きく役立つほか、就職・転職時に優遇される可能性も高く、実際に採用となった際にも即戦力として重宝されるでしょう。
司法書士試験は難しい?
司法書士試験の概要
司法書士試験は、法律に関する専門知識や技能を認定するための国家試験です。受験資格には条件がなく、年齢、学歴、国籍などにかかわらず誰でも試験を受けることができます。
受験回数にも制限がないため、受験者は何度でも試験にチャレンジすることが可能です。
受験者の平均年齢は40歳ですが、20代から70代まで幅広い世代が受験し、合格を目指せることが特徴です。
司法書士試験の構成は、筆記試験と口述試験から成り立っています。
筆記試験は毎年7月に実施され、その合格者のみが10月に行われる口述試験に進む資格を獲得できます。
申し込み期間は5月中旬で、合格発表は10月下旬から11月上旬です。
試験内容は幅広く、民法、商法、会社法、不動産登記法、商業登記法など、合計11科目が出題されます。
司法書士試験の難易度
司法書士試験の合格率は4~5%台の低水準で推移しており、難易度の高さがうかがえます。
令和5年度の試験では、受験者数13,372人に対して、合格者数はわずか695名でした。
試験で求められる法律知識の幅広さや実務応用力は例年難しく、今後も合格率が大きく上向くとは想定しにくいでしょう。
まとめ
司法書士資格は、年齢に関係なく就職・転職に有利であることは間違いありません。売り手市場の司法書士において、それは顕著な事実です。
20代・30代の場合、若さと法律の専門知識がアドバンテージになります。40代以降は豊富な社会経験を活かし、信頼性のある法律専門家としてのキャリアを築くことが可能です。
司法書士資格を活かした就職・転職活動は、弊社MS-Japanの「MS Agent」にご相談ください。「MS Agent」は、管理部門・士業に特化した転職エージェントとして、30年以上の実績があります。
長年培ったノウハウとネットワークもとに、転職活動をトータルサポート致します。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、食品メーカー営業を経て2005年MS-Japan入社。企業側営業担当を1年半経験し、以降はカウンセラー業務を担当。若手中堅スタッフの方から、40~50代のマネージャー・シニア層の方まで、年齢層問わず年間500名以上をカウンセリングさせていただいています。
企業管理部門全般~会計事務所など士業界、会計士・税理士・弁護士資格者まで弊社の特化領域全般を担当しています。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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