経理の平均年収はいくら?年収アップのポイントをご紹介
経理は管理部門の中でも専門性が高く、知識とスキルが求められます。
しかし、年収が低いと言われることも少なくないため、現在経理として働いている人は、自分の年収を同世代と比較したいと考える方も多いでしょう。
そこで、今回は経理の平均年収を年代別に集計し、年収アップのポイントとして、高年収求人に求められるスキルやおすすめの資格などついて解説します。
経理の平均年収
経理の仕事は、簿記や財務などの知識が必要なだけでなく、知識を実務で使いこなすスキルも求められる専門職です。
そのため、「経理は年収が低い」と言われることもありますが、実際は、一般的な事務職よりも給与が高い傾向にあります。
ここでは、弊社MS-Japanが提供する管理部門特化型の転職エージェント「MS Agent」の登録データをもとに、経理の平均年収をみていきましょう。
平均年収 | 出典 | |
---|---|---|
経理の決定年収 | 536万円 | MS Agentを利用した経理職の オファー年収 (2023年4月~2024年3月) |
日本全国の正社員 | 523万円 | 国税庁 令和4年分民間給与実態統計調査 |
※オファー年収は月額給与及び定期的に支給される賞与の合計額であり、別途支給される時間外手当や決算賞与等の変動要素がある金額に関しては含まれておりません。
2023年4月~2024年3月に「MS Agent」を利用して転職された経理職のオファー年収の平均値が536万円で、中央値は483万円です。
対して、国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」では、日本全国における正社員の平均年収が523万円でした。
「MS Agent」を利用した経理職が、全国平均の13万円ほど高いことから、専門知識とスキルが求められる経理は、全国平均以上の給与水準であると言えるでしょう。
さらに、「MS Agent」利用者の傾向として、キャリア志向があり、情報収集に積極的な転職希望者が集まっていることが影響している可能性があります。
経理の各年代の年収比率
次に、2023年4月~2024年3月の1年間で、MS-Japanの転職エージェントサービスMS Agentを利用して転職された経理職のオファー年収を年代別に分けて比較してみましょう。
年代 | 平均値 | 中央値 |
---|---|---|
20代 | 408万円 | 394万円 |
30代 | 518万円 | 496万円 |
40代 | 641万円 | 600万円 |
50代 | 726万円 | 720万円 |
60代以上 | 638万円 | 601万円 |
※オファー年収は月額給与及び定期的に支給される賞与の合計額であり、別途支給される時間外手当や決算賞与等の変動要素がある金額に関しては含まれておりません。
平均値が最も低いのは20代の408万円、対して最も高くなるのが、50代の726万円でした。また、定年退職以降も含む60代以上は、下降傾向にあるようです。
このデータから、経理は年代が上がるに伴い、年収も高くなる傾向が分かります。
経理の仕事では、知識と経験の積み重ねが求められるため、必然的に年代が上になるほど、年収も高くなると言えるでしょう。
しかし、ただ年を重ねるだけで評価され、年収が上がるというわけではなく、年齢に応じたスキルや経験を身につけることが重要です。
次の章では、年収が高い求人で求められるスキルをご紹介します。
年収が高い人の条件とは
それでは、年収を上げるためにはどうしたらよいのでしょうか。
一般的に、年収が高い経理人材は、次の条件を満たしている傾向があります。
- ・高度な経理財務業務をこなす実務能力
- ・簿記2級以上の資格
- ・コミュニケーションスキル
- ・高度かつ専門的な英語力
- ・マネジメント能力とリーダーシップ
経理は、知識が非常に重要な職種ですが、知識を身に着けた上で、正確に業務を行う実務能力が求められます。
具体的には、簿記2級以上の資格取得が経理の登竜門と言えます。
ただ、資格を取得すれば良いのではなく、資格取得で得た知識を業務に活かすことが重要です。
また、大会社や外資系を取引相手にする企業であれば、英語力が求められるケースが増えてきています。
さらに、管理職では、専門知識・実務スキルに加えて、経営陣に正しい判断を促す経営者視点とコミュニケーションスキルも必要不可欠です。
【独自調査】年収が高い求人で求められるスキル・業務経験
続いて、年収が高い求人で求められるスキル・業務経験をみていきましょう。
「MS Agent」で2023年上半期に掲載された経理求人の内、想定下限年収が600万円以上の高年収求人について、求められるスキル・経験の傾向を分析しました。
高年収求人の内、92%で「決算業務」のスキル・経験が求められています。
また、高年収以外も含めた全年収の求人においては、「決算業務」の経験を求めている求人は70%にとどまり、22%の差がありました。
「決算業務」の経験者は、経理人材として重宝され、年収アップのための転職を目指すことが可能でしょう。
次に、「決算業務」の内訳について詳細を見てきましょう。
「決算業務」の中でも、3年以上の「年次決算」経験を求める求人は、約半数の51%でした。
また、「上場企業経理」の経験や、「連結決算(国内)」、「有価証券報告書(3年以上)」などを求める求人が多いことから、高年収求人は上場企業である傾向が高いと推察できます。
経理で年収を上げるために学ぶべき分野
次に、年収を上げるために学ぶべき分野について解説します。
税務
経理の業務には「税務」の知識が必要不可欠です。
決算に関わる法人税や消費税、給与計算で発生する源泉所得税や住民税等、様々な税務知識が求められます。
月次・年次の決算で関連する税務が異なるため、現在携わっている業務や今後挑戦したい業務に関連するものについて積極的に習得しましょう。
管理会計
「管理会計」とは、経営判断・企業戦略に役立てるために、必要情報をまとめる会計資料です。
会社の動きをお金の流れから紐解き、週次・月次で各部門の細かな数値を把握・管理することで、無駄な出費や不正・非効率な仕組みの有無などを客観的に評価・改善が可能です。
管理会計の知識を持っていれば、経営に役立つ数字を算出できるため、企業参謀を担う経理担当者として重宝されるでしょう。
決算書
前述の「【独自調査】年収が高い求人で求められるスキル・業務内容」でもお伝えした通り、経理の転職市場では「決算書」の知識は重要です。
決算書は、1年間を総括して次年度の経営戦略の根拠となるだけでなく、金融機関や株主・投資家などに開示され、資金調達も左右します。
知識を持って信頼性の高い決算書を作成できる経理担当者は、多くの企業で高いニーズがあるでしょう。
上場(IPO)
上場達成には、証券取引所での審査に合格する必要があります。
特に財務情報が厳しくチェックされるため、上場準備は経理の職務が大きくなります。
また、上場準備は、通常の経理業務と並行する必要があるだけでなく、専門知識が求められるため、専門要員として新たに人材を採用する企業が多い傾向があります。
そのため、上場経験や上場準備に関する知識を持っていれば、IPOリーダーとして転職できる可能性があるでしょう。
年収アップに役立つ経理資格
前述の「年収が高い人の条件とは」で、簿記2級以上の資格をおすすめしましたが、ここで具体例として3つの資格をご紹介します。
FASS検定(経理・財務スキル検定)
経済産業省が発案したFASS検定は、経理・財務に特化した検定試験です。
社内研修として利用している企業も多く、A~Eの5段階評価で実務知識とスキルを測定します。
経理として評価されるのはレベルC以上と言われていますが、eラーニングプログラムが公式教材として提供されているので、独学でも対策できるでしょう。
日商簿記検定1級
日商簿記検定の最高ランクである1級は、商業・工業簿記、会計学、原価計算などの高度な専門知識だけでなく、経営管理・分析力が問われます。
2級と比較して出題範囲が極めて広範囲で、難易度が上がるため、合格率は例年10%程度です。
ビジネス会計検定
ビジネス会計検定は、主に財務諸表の知識や分析力について問われる検定試験です。
簿記2級でも財務諸表の作成スキルについて出題されますが、ビジネス会計士検定では、財務諸表を分析するスキルが問われます。
財務諸表の項目について構造理解や基礎的な分析力が問われる3級から、企業の経営・事業戦略を理解できる応用力が問われる2級、総合的な会計知識が求められる1級に分かれます。
転職で年収アップさせるポイント
年収をアップさせるためには、現職で昇級する場合でも、転職する場合でも、スキルや実績が必要です。
ここでは、年収アップに向けて着実に経験値を上げていく方法について解説します。
イレギュラーに対応できる柔軟性を身に着ける
経理の仕事は原理原則となるルールが明確ですが、実際のビジネスシーンでは、様々なイレギュラーが発生します。
そのため、経理担当者にはルールとイレギュラーの間で、柔軟に対応できる力が求められます。
柔軟な対応力を身につけるためには、実務経験を積み、様々なケースを体験するのが最も有効でしょう。
日々の業務をただの労働と考えるのではなく、将来役に立つ重要な学びとして、ひとつひとつ大切に取り組むことが重要です。
異動やプロジェクトは積極的に
知識やスキルだけでは大幅な年収アップは期待できません。
企業は、管理職として組織を動かせる人材を求めているのです。
そのため、異動やプロジェクトには積極的に関わり、実績を積みましょう。
どんなに小さな実績でも後々大きく評価に差がつきます。
今すぐ成長企業に転職
状況によっては、今すぐに転職することが最善策である場合もあります。
業績の悪い企業や成長性のない企業、年功序列が強い企業などは、新しい業務に携わる機会が少なく、キャリアアップ・スキルアップが期待できません。
そのような環境にいる人は、今すぐ成長企業に転職することを考えても良いでしょう。
IT業界やIPOを目指すベンチャー企業などは、旧態依然として社風が少なく変化に富んだ企業が多いため、業務の幅を広げたい方におすすめです。
また、外資系企業も実力重視の傾向があるので、取り組み次第でチャンスを獲得できる環境です。
経理で年収アップの転職に成功した事例
「MS Agent」を利用した転職者の中で、年収アップに成功した方の事例を2つご紹介します。
中小企業から上場企業へキャリアアップを叶えたHさん(20代男性)の事例
転職前:売上高20憶円弱の中小企業(年収:350万)
転職後:売上高5兆円の上場企業(年収:400万)
資格:簿記1級、TOEIC800点
中小企業で約2年間、月次・年次決算補助業務まで担当していたHさんですが、上場基準での会計に携わりたいという気持ちと、現在の会社の将来性への不安が強くなり、転職を決意しました。
Hさんは上場大手企業へ転職を希望していたため、弊社からは上場企業での実務未経験でも応募可能な上場企業をご紹介させていただき、上場大手企業への転職を叶えました。
非上場企業から上場企業への転職は、30代以降になると少し難易度が高くなります。
そのため、Hさんのように、20代の内に武器となる資格を取得し、ポテンシャル採用の可能性を広げることが重要です。
希望のキャリアを叶えるために、いつまでに何を成し遂げる必要があるかを整理しましょう。
上場企業・海外現地企業・スタートアップ企業の経験を生かし、上場企業へ再挑戦したAさんの事例
転職前:スタートアップ企業(年収:500万円)
転職後:上場企業(年収:610万円)
Aさんは大学卒業後、上場企業で約10年勤務し、海外現地企業→スタートアップ企業の管理部門長と3社経験しました。
直近は年収500万円でしたが、1社目の退職時年収が650万円だったため、少しでも給与水準を戻すことを目標に転職活動を決意します。
新型コロナウイルスの影響が徐々に落ち着いてきたこともあり、海外と接点を持ち、1社目で培った経理財務経験を活かせる上場企業を希望していました。
しかし、今回の転職でいきなり上場企業の管理職はハードルが高いため「管理職候補ポジション」「海外に子会社有」を軸に決めました。
全ての条件を満たす求人は多くは無かったものの、業界を絞らず探したことが功を奏し、Aさんの希望に叶う企業から内定を獲得しました。
Aさんは、転職活動の軸に優先順位を付けたことで成功に繋がりました。
業界を絞らずに応募し、業界未経験が理由で書類選考が通らないこともありますが、他の経験・スキルを評価された結果、内定・入社へと至りました。
まずは、転職理由やきっかけ、今後のキャリプランをしっかりと棚卸しすることで、選択肢を増やすことができます。
まとめ
経理は、専門的な知識をベースとして、知識を柔軟に使いこなすためのスキルが必要です。
年数を重ねるごとにスキルが高まっていく積み上げ型の職種なので、年代が上になるほど平均年収も高くなる傾向があります。
そのため、経理の専門知識と、様々なイレギュラーに対応できるスキルを併せて積み上げていくことが、キャリアアップ・年収アップに重要です。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、化粧品会社へ入社し美容部員として店舗販売業務に従事。
その後キャリアアドバイザーとしてMS-Japanに入社し、
主に経理財務や会計事務所などの会計転職希望の方を中心に担当。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 税理士科目合格 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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