税理士の将来性は?今後必要なスキルや需要のある3つの分野などを解説!
AI時代が到来しつつある中、話題に上がるのが税理士の将来性です。
これまで税理士が行ってきた専門業務は、AI・ITツールが発達する中で次第にその特殊性が薄れ、今後「税理士にわざわざ頼まなくてもできる作業」が増えるといわれています。本当に税理士には将来性はなく、取り組むべき仕事はなくなっていくのでしょうか。
今回は税理士に将来性はあるのか、また求められる知識・スキルは何かについて解説します。
「税理士に将来性はない」といわれる理由
受験者数・試験合格者数の減少
税理士試験の受験者数、試験合格者数ともに近年は伸び悩んでいます。
受験者数は2014年度試験で4万1,031人でしたが、2023年度試験では約8,000人減となる3万2,893人まで減少しています。コロナ禍の影響があったとはいえ、大きな減少幅が生じました。
合格者数も伸び悩む時期が続き、2019年度試験では5,388人でしたが、2021年度試験では5,139人まで落ち込んでいましたが、受験資格緩和により簿記論・財務諸表論の受検者数が伸び2023年度試験は7,125人の合格数と復調の兆しも見え始めておりますが、人手不足が続く税理士業界では、さらなる受験者増が望まれるところです。
中小企業の数の減少
税理士の将来が不安視される原因の1つが、中小企業数の減少です。
国内の中小企業が減りつつある理由は、経営者の高齢化およびその後継者不足です。
事業活動自体はうまくいっていても、オーナー兼経営者が高齢化により仕事ができなくなり、かつ後継者がいない場合、廃業せざるを得ません。いわゆる黒字倒産などの事態が起こるわけです。
税理士事務所の主な顧客は、中小企業および個人事業主です。中小企業数の減少は、そのまま受注できる仕事の不足に直結します。
インターネット・SNSの普及
経営者、あるいは経理・会計部門などの一般社員が税務や会計について勉強する場合、かつては、書籍やセミナーなどお金を払って学ぶのが通例でした。
しかもその内容は難しいものが多く、基本的な知識を得るのが精一杯であり、それゆえに税理士の専門的知識に頼らざるを得ないことも多かったわけです。
ところが、インターネットやSNSがこうした状況を一変させました。
インターネット・SNS上に、税務・会計について画像や動画を駆使してわかりやすく解説するサイトが多数登場し、しかも無料であることが多いです。
メールやチャットで質問もできるので勉強もしやすく、税理士資格をもっていなくても、税理士水準の知識を得ることも難しくありません。税法についても、スマホがあれば瞬時に内容を調べられます。
こうした情報環境の激変により、「税理士がいなくても、ある程度の作業は自分でできる」といった状況が生じやすくなりました。それまで税理士が担ってきた作業を顧客が自分で取り組めるようになれば、かつてのようには税理士に仕事が回ってこなくなります。
AI・ITツールの普及
近年著しい技術開発が進んでいる各種AI・ITツールにより、税理士業務の多くが代替されてしまうとの指摘もあります。
オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン博士が発表した論文によると、現在仕事として存在している業務の多くがAIによって仕事を奪われ、その中には経理データの入力業務や、税務代行業務なども含まれていました。
現在は税理士の独占業務とされている「税務書類の作成」「税務代理」「税務相談」についても、「安全性の高いAIが行った方が、経済にとって生産性向上につながる」といったことを根拠に、将来的に法制度が変更される可能性も否定できません。そうなると税理士資格の重要性は減少するでしょう。
税理士業界の現状と今後
では、本当に税理士に仕事がなくなるかというと、決してそのようなことはありません。
AI・ITツールについては、入力・仕訳を行えるシステムを導入しても、最終的に使いこなすのはやはり人間です。つまり、AI・ITツールをその企業に合わせてうまく活用できる人材が別途必要になるわけです。
一般企業の場合、AI・ITツールを使いこなし税理士業務を代替するには、専門のシステムエンジニア(担当者)を常駐させる必要があります。経理・会計の専門知識に加えて、システムエンジニアとしてのスキルをもつ人材は希少であり、とくに中小企業や個人事業主が雇用するのは極めて難しいです。
そのため、税理士が本来もつ専門知識に加えて、AI・ITツールを使いこなせるスキルも身につけていたら、AI時代が到来してもニーズが減少することはないでしょう。つまり、AI・ITツールを活用できるというこれまでの税理士にはない付加価値をもつことで、多くの企業から引く手あまたの状況が生じるわけです。
AI・ITツールの活用という点については、若手税理士の活躍できるチャンスが広がる側面ももっています。税理士は高齢化が進みつつありますが、最新のAI・ITツールへの適応力は、中高年世代よりも若い世代の方が高いでしょう。中高年世代の税理士にはない強みをもつことで、若い世代の税理士が新規顧客を獲得する機会が増えるのではないでしょうか。
また、副業をすることで、収入を増やす方法もあります。税理士が働くフィールドは多いですが、副業できるかどうかは、勤務先の組織が認めるかどうか次第です。近年では働き方改革の影響もあり、仕事への取り組み方が多様化し、規制を緩和する傾向も生じつつあります。
ただし税理士法上、税理士法人の範囲に含まれる業務を個人として行うことは禁じられているので、この点は注意が必要です。
税理士として活躍し続けるためには
近年、とくに中小企業や個人事業主において深刻化しつつあるのが、事業承継の問題です。
経営者兼オーナーが事業承継を行う場合、かつては自分の親族の中から後継者を選ぶのが通例でした。
しかし現在では、親族の中に後を継いでくれる人が見つからず、第三者に承継する動きが増えています。その際に重要となるのが、事業承継のため第三者に自社を買ってもらうこと、すなわちM&Aの視点です。
近年ではこの事業承継のためのM&Aを滞りなく実施するため、税理士の力を借りるケースが増えています。この場合、税理士が行うのは、企業価値・自社株の評価、事業承継の手段を選ぶ上での助言、税金面でのアドバイス、資金調達へのサポート、買収監査などです。
これら事業承継のためのM&Aに関する専門知識、経験をもつことで、税理士としての市場価値を上げることが可能です。
経営者の高齢化とその事業承継の問題は、今後も長く続き、日本経済全体が取り組み続けるべき課題です。そのためのスキル・知識をもつ税理士は、AI時代が到来しても生き残れます。
今注目の3つの専門分野
税理士が専門性を高め、労働市場での価値を高められる分野として、以下の3つが挙げられます。
国際税務
グローバル化が進む現在、日本企業が海外で事業を行ったり、外国企業が国内で事業を始めたりするケースが増えつつあります。
日本と海外とでは税法の内容が違うので、企業経営の現場では、日本のみならず各国の税法知識が求められています。税知識が不足すると二重課税や脱税といった事態も起こりかねないので、海外の税法に精通した税理士へのニーズが高まっているのです。
相続
高齢化が進む日本では、老親が子どもたちに財産を譲渡する相続への関心が高まりつつあります。
税理士試験において、相続税は選択科目の1つとして登場しますが、あくまで選択科目なので別の税法を選択して税理士になった人も少なくありません。そのため、相続税に関する専門知識をもつ税理士は、それをもたない税理士に比べて市場価値が高いです。
M&A
M&Aといっても、この場合は会社の経営権・事業を後継者に引き継ぐために行われるものを指します。
日本では高齢化が進む中、60代や70代の経営者が増え、それに伴い事業承継へのニーズが上昇しています。そのための専門知識を身につけることは、税理士としての強みに直結するでしょう。
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まとめ
税理士は将来性がないとよくいわれますが、「現状のまま、努力・対策をしないでいる税理士」にはこの言葉は該当するかもしれません。
しかし、時代のニーズに合わせた専門知識・スキルを身につけた税理士であれば、AI時代が到来しても仕事は発生し続けます。
税理士試験に合格することは決してゴールではなく、そこからどのような強みを身につけていくのかが、本当の勝負どころといえます。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、ウェディングプランナー、業界大手で求人広告の企画提案営業を経て、MS-Japanへ入社。
企業担当のリクルーティングアドバイザーを経験した後、現在は転職を考えられている方のキャリアアドバイザーとして、若手ポテンシャル層~シニアベテラン層まで多くの方の転職活動のサポートをしています。
人材業界での経験も長くなり、いつまでも誰かの記憶に残る仕事をしていたいと思っています。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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