「開業税理士」と「所属税理士」の年収はどっちが高い?【年収アップ事例あり】
「開業税理士」と「所属税理士」の年収はどっちが高い?【年収アップ事例あり】
インターネットで「税理士」というワードを検索すると、税理士の年収について記載された記事が大量に出てくるようになりました。
また、当サイトでは会計業界に関する様々なコンテンツを配信していますが、その中でも「年収」に関するコーナーの閲覧数が飛びぬけて多い状態です。
この状況は、世の中の税理士、科目合格者が“自身の属する業界の年収”について非常に高い興味を持っていることの表れなのだと思います。
そこで 今回の会計トピックスでは、開業税理士と所属税理士の年収水準の実態について解説させて頂こうと思います。
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年齢ごとの税理士の平均年収
厚生労働省の発表している「賃金構造基本統計調査」によると、税理士の平均年収は約950万円とされています。
また、年代別に分けると20代は約435万円、30代では約960万円、40代では約1,130万円と年齢を重ねるごとに年収は上がっていく傾向にあります。
年齢 | 企業規模10人以上の企業の年収(千円) | 企業規模10~99人の企業の年収(千円) | 企業規模100~999人の企業の年収(千円) | 企業規模1000人以上の企業の年収(千円) |
---|---|---|---|---|
20~24歳 | 2625.0 | 2592.0 | - | - |
25~29歳 | 4552.0 | 3372.4 | 4711.9 | 5918.9 |
30~34歳 | 6052.1 | 4954.1 | 7803.0 | 6883.5 |
35~39歳 | 6905.8 | 5329.6 | 8834.9 | 7088.7 |
40~44歳 | 6619.7 | 6320.1 | 8394.4 | - |
45~49歳 | 7591.1 | 6814.0 | 8747.6 | 8205.8 |
50~54歳 | 7192.3 | 5574.9 | 8741.1 | - |
55~59歳 | 9304.8 | 7667.6 | 21716.4 | 12140.0 |
60~64歳 | 6527.9 | 6185.7 | 3372.0 | - |
65~69歳 | 5314.9 | 5330.3 | 3686.7 | - |
70歳~ | 3241.1 | 3236.2 | - | - |
しかし、このデータは会計士と税理士を合わせたもので、税理士の現実的な年収を反映しているとは言い切れません。
次項からはより詳細なデータを見ながら、現実的な税理士の年収についてより深堀して解説いたします。
開業税理士の場合
以前は開業税理士の年収は最低でも1,000万円以上、
高所得税理士ともなれば3,000~5,000万円、1億円越えも夢ではないと言われてました。
しかし、現在開業をされている税理士の平均年収は2,500~3,000万円という見方が妥当です。
以下は、日本税理士会連合会が発表した「第6回税理士実態調査報告書(平成26年)」において、開業税理士・社員税理士・補助税理士の総所得および給与収入額の調査結果をまとめたものとなります。
総所得 | 割合 |
---|---|
300万円以下 | 31.4% |
500万円以下 | 16.7% |
700万円以下 | 12.0% |
1,000万円以下 | 13.5% |
1,500万円以下 | 11.0% |
2,000万円以下 | 5.0% |
3,000万円以下 | 3.4% |
5,000万円以下 | 1.5% |
5,000万円以上 | 0.5% |
無記入 | 5.0% |
2022年現在の最新の年収データとは言えませんが、年収500万円以下と回答した税理士は全体の48.1%を占めており、年収2,000万円以上~の枠にいる税理士は5%前後と、思うように稼げていない税理士が多いと言わざるを得ない結果が出ています。
このことから、データだけを見た場合、残念ながら開業税理士として稼ぐことは決して簡単ではないことが分かります。
しかし、稼げている人が一定数存在していることも事実ですから、今なお独立は税理士として魅力的な選択肢と言えるでしょう。
☑
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勤務税理士の場合
勤務税理士の年収は「どこで働くか」が重要なポイントとなります。
厚生労働省の「令和元年度賃金構造基本統計調査」によると、事業所の企業規模によって、平均年収が以下のように変わることが分かっています。 なお、金額は千の位を切り捨てて算出しています。
■企業規模10~99人きまって支給する現金給与額(1ヶ月分) | 39万円 |
年間賞与その他特別給与額 | 97万円 |
年収額 | 565万円 |
■企業規模100~999人
きまって支給する現金給与額(1ヶ月分) | 90万円 |
年間賞与その他特別給与額 | 104万円 |
年収額 | 1,184万円 |
■企業規模1,000人以上
きまって支給する現金給与額(1ヶ月分) | 55万円 |
年間賞与その他特別給与額 | 168万円 |
年収額 | 828万円 |
企業規模が小さめの場合、その分だけ年収も低くなっていることが分かりますが、逆に大きい場合でも年収増には必ずしも結びついていないことが分かります。
また、税理士の転職に詳しい当社MS-Japanの調べ(2015年)では、
「所属税理士の中でも800万円以上稼げている方の比率は少なく、むしろ年収500~600万円程度の税理士が多い」
という結果になっていました。
会計事務所によって給与水準の高低はありますが、中には年収300万円台の税理士も存在するようです。そのような状況を鑑みると、所属税理士の中にも年収格差は存在し、年収を上げていくことに苦戦をされている方も一定数存在すると言えるでしょう。
また、BIG4税理士法人や有名コンサルティングファームで働いている場合と、地方の税理士法人・税理士事務所で働いている場合とでは、自ずと金額にも違いが生まれるものと推察されます。
BIG4税理士法人の場合
組織そのものが巨大なBIG4では、「役職」が年収に関係してきます。 以下に、主な役職名と年収の目安についてお伝えします。
役職名 | 年収額 |
---|---|
スタッフ | 500万円~700万円 |
シニアスタッフ | 700万円~800万円 |
マネージャー | 1000万円程度 |
パートナー | 1500万円以上 |
仮に、BIG4クラスでパートナーとして働けるようになった場合でも、年収は1,500万円以上からのスタートになることが予想されるため、開業税理士と比較して年収増へのステップアップは遅くなってしまうおそれがあります。
一方で、巨大な組織の看板を借りて仕事ができる分だけ、顧客離れに悩むリスクも少ないため、安定した立場で高収入を目指したい人には勤務税理士の方が有利と言えるかもしれません。
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参考記事
厚生労働省賃金構造基本統計調査
税理士の年収は下がる一方なのか?
現在の税理士の年収相場は若干元気がないように感じるかもしれません。
しかしそれは、実際にあなたの年収が上がらない、ということではありません。
統計はあくまで統計であり、実際に高い年収を稼ぎだしている税理士も多く存在します。
そして、何よりも「できる税理士」は開業をしていても、していなくても常に稼げる税理士になる為の努力を怠っていません。
仕事が出来る税理士は自ら顧客に提案をし、定型業務以外のアドバイスやコンサルティングサービスを着実に行っています。
組織に属しながら年収をUPさせていく方であれば、税理士としての専門性を常に高めて、役職を上げていくことで1000万円以上を狙うということも十分可能です。
税理士法人に勤務されている方であれば、パートナー税理士となることで相応の役員報酬を享受することも可能です。
開業税理士、所属税理士のどちらであっても、稼げる税理士になる為には日々の努力が不可欠です。
その努力の仕方にも幾つかのポイントがありますので、気になる方は別トピックス「稼げる税理士7つの法則」をご覧ください。
税理士が転職して年収を上げる方法
ここまでお伝えしてきた通り、税理士として働く中で年収を上げていくためには、働き方・働く場所を選ぶ必要があります。
数多くのクライアントを抱えるようになる・独自の商品プランを設計するなど、税理士の枠を超えた提案ができるようになれば、その分だけ年収も増えるであろうことが期待できます。
ただ、そういった働き方をするためには、やはり独立できるかどうかが成功の分かれ目となります。 実入りが大きい働き方を選べる実力があると思うなら、独立に向けて行動を起こすのが年収増への近道です。
転職によって年収増を目指すなら、BIG4あるいは大手・中堅税理士法人で働くことを考えたいところです。
町事務所のような数名規模の会計事務所は、抱えるクライアントの数も少ないことから年収水準も低い傾向にあるため、仕事は多いのに年収は少ないといった状況に見舞われるリスクも少なくありません。
それなりの金額で安定した収入を得たいと考えているなら、税理士法人・会計事務所にこだわらず、大手企業の社内税理士として働くのも魅力的な選択肢です。
どのような選択肢を選ぶにせよ、自分が無理なくキャリアアップできる環境で働くことが、成功への王道と言えるでしょう。
年収アップの転職成功事例
実際に転職して年収がアップしたケースとしては、どのような事例があるのでしょうか。
以下に、MS-Japanの転職サービスを介して年収アップに成功した例を、いくつかご紹介します。
個人会計事務所(年収600万円)→ベンチャー会計事務所(年収700万円)
転職者は、前職においてフロントスタッフとして税務以外にも幅広い業務を担当していましたが、税理士試験に合格したことで、税理士の本分である税務面でのスキルアップを課題と考えるようになりました。
そこで、比較的若手の所員が多いベンチャー気質の会計事務所へと転職することを決め、実務面でのリーダー要員として、見事年収を100万円アップさせることに成功しました。
⇒詳しくはこちら
外資系特化型会計事務所(年収560万円)→Big4税理士法人(年収650万円)
転職者は、独立系の外資系特化型会計事務所で働いており、在職中に資格取得となりましたが、年収増にはつながりませんでした。
そこで、税理士として年収水準が高いBig4税理士法人に応募、外資系特化型の環境で培った英語力・法人税の知識をアピールし採用を決め、年収は90万円のアップを実現しています。
⇒詳しくはこちら
まとめ
以上、開業税理士と勤務税理士の違いを、年収の観点から解説してきました。
開業税理士は、働き方次第で勤務税理士を上回る年収を稼ぐことも可能ですが、その数は決して多くなく、税理士の独占業務を離れた分野でどのような提案ができるかが年収アップのポイントになります。
これに対して勤務税理士は、年収の面で上限が設けられている部分は否めませんが、安定して収入を増やしやすいという利点があります。
どちらの方向性でキャリアアップを目指すにせよ、それぞれのリスクとリターンを把握した上で、自分の実力にあった選択をすることが成功につながります。
開業税理士に対して強い憧れを抱くことなく、かといってオーバースペックの勤務税理士になることなく、転職に向けたプランを練ることが大切です。
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この記事を監修した人
現在は会計事務所・税理士法人・監査法人・コンサルティング会社等への採用支援、及び転職希望の方の転職支援を兼務。
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