建設業経理士は転職に役立つ⁈資格の概要や合格率、日商簿記との違いも紹介
経理に関係する資格と聞くと、多くの人は簿記検定を思い浮かべるかもしれません。
しかし、同じ経理に属する資格の中でも、やや特殊な部類に分類される資格はいくつか存在しており、その中の一つに「建設業経理士」があげられます。
その名の通り、建設業界で重宝する資格として知られており、級が高くなるにつれて合格率も低くなっていきます。
上級クラスの資格取得者がいることで、転職に有利になる側面があるため、資格取得のメリットは大きいと言えます。
この記事では、そんな建設業経理士の資格について、概要や資格の有用性・簿記試験との違いなどについて紹介します。
建設業経理士(建設業経理事務士)とは
建設業経理士は、一般社団法人建設業振興基金が行っている「建設業経理検定試験」に合格した人のことを言います。
平成19年3月11日の試験より前に合格した人は建設業経理事務士と呼ばれますが、名称が異なるだけで扱いは同じです。
資格取得者は、建設業における専門会計知識・会計処理能力を持つ人材として評価されます。
一般的な企業の経理は、完成したモノを売る・売るためのモノを作る部分について仕訳を行い、企業のお金の流れを記録します。
日商簿記2級では、商業簿記・工業簿記という2種類の分野を学び、その後1級になると原価計算・会計学についても学びます。
これに対して、建設業経理士検定試験は、建設業に特化した知識を確認するための試験です。
建設業では、最終完成したモノを形が出来上がってから販売するのではなく、仕事を受注してから工事が始まりお金が動くのが基本となるため、会計処理が特殊です。
専門用語も多く、経理担当者もそれらを理解した上で会計処理が必要となります。
建設業経理検定試験に合格することは、建設業に精通することも意味しているのです。
建設業経理士検定試験の内容・合格率・難易度
建設業経理士検定試験の概要について、詳しく解説します。
試験内容
建設業経理検定試験は、建設業という受注産業独特の事情を踏まえた上で会計処理ができるよう、知識の向上を図ることを目的としています。
建設業経理士の資格は、内容と程度によって1~4級に分かれています。
・1級:建設業原価計算・財務諸表・財務分析
・2級:建設業の簿記・原価計算・会社会計
・3級:建設業の簿記・原価計算
・4級:初歩的な建設業簿記の仕組み
1級・2級レベルの合格者は、公共工事の入札可否において重要な、経営事項審査の評価対象となります
試験日程
建設業経理士の試験は年2回実施されています。
9月に実施される上期は1・2級、3月に実施される下期が1~4級が対象です。
例年、試験日の2カ月後にホームページにて合格発表を行っています。
受験資格
受験資格に制限はないため、誰もが希望する級の試験を受験できます。
しかし、1級とその他の級を同じ日に受験することはできません。
受験料
・1級:8120円(1科目)、11,420円(2科目同時受験)、14,720円(3科目同時受験)
・2級:7,120円
・3級:5,820円
・4級:4,720円
合格率・難易度
建設業経理検定試験の合格判定は、全ての階級において正答率70%が基準です。
合格率・難易度は、受験する級によって異なります。
令和4年9月11に実施された、第31回の合格率は下記の通りです。
級 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
1級(財務諸表) | 1,687 | 357 | 21.2% |
1級(財務分析) | 1,359 | 605 | 44.5% |
1級(原価計算) | 1,869 | 285 | 15.2% |
1級(財務分析) | 1,359 | 605 | 44.5% |
2級 | 8,847 | 2,993 | 33.8% |
3級 | 2,010 | 1,171 | 58.3% |
4級 | 185 | 144 | 77.8% |
出典:建設業経理検定試験|一般財団法人建設業振興基金
1級には科目合格制度があるため、合格通知書公布日から5年間有効です。
勉強時間の目安は、それぞれ3級は約3~5カ月、2級は約2~8カ月、1級は約6カ月~1年と言われています。独学や通信講座などの勉強方法や、簿記の基礎知識の有無などで所要時間は異なります。
建設業経理士の資格を取得するメリットは?
建設業経理士の資格を取得すると、以下のようなメリットがあります。
建設業界に特化した転職に有利
建設業経理士の資格を保有することで、建設業に関する専門知識が身についている証明になります。
専門用語が多く、特殊な会計処理が必要なため、一般的な日商簿記よりも建設業界へのアドバンテージが大きくなります。
入札で経営事項審査の加点対象となる
官公庁の公共工事の入札に参加する際、社内に建築業経理士2級以上の合格者がいる場合は、経営事項審査の加点対象となります。
1級は1.0ポイント、2級は0.4ポイントが換算されます。このポイントは「公認会計士等数値」と呼ばれ、年間平均完成工事高に応じた数値を確保できていれば入札時の評価につながります。
有資格者が在籍しているだけで加点されるため、応募先企業の事情によっては資格の有無で採用の可能性が大きく変わる可能性があります。
建設業経理士の取得における注意点
2級以上は5年ごとに講習を受ける必要がある
前の章で紹介した通り、2級以上の合格者が社内にいる場合は経営事項審査の加点対象です。
ただし、加点対象となるのは資格を取得してから5年間までで、その後5年ごとに講習を受けて知識のアップデートをする必要があります。
この講習は「建設業経理士CPD講習」と呼ばれており、講義時間は講義6時間と試験1時間の計7時間です。
オンライン講習と会場講習で受講が可能ですが、資格を取得したら終わりというわけではないため、取得後も注意が必要です。
建設業界以外の業種では評価されない場合もある
一般的な簿記の基礎知識も網羅することはできるため、資格を持っていない方と比較すると有利になります。
しかし、あくまでも建設業界に特化した資格であることから、簿記や会計士などの資格と比較すると評価がされにくい可能性があります。
他の業界も視野に入れている場合は、建設業経理士ではなく簿記資格を取得することをおすすめします。
建設業経理士の資格を活かした転職活動のポイントは?
建設業経理士の資格を取得すれば、建設業や建築業、土木業などへの転職活動を成功させる可能性が高まります。
また、前述したとおり、応募先企業の人員体制によっても転職成功率が大きく左右されます。
そのため、建築業経理士の資格を活かした転職活動を行う際は、応募先企業の事情に詳しい転職エージェントの利用もおすすめです。
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建設業経理士の資格を活かせる求人例
経理マネージャー候補/ワークライフバランス◎/各種手当・福利厚生充実/女性も働きやすい環境
仕事内容 |
・決算業務(月次・四半期) ・管理会計 ・原価計算業務 ・税務申告 ・各種報告資料の作成 |
必要な経験・能力 |
【必須】
【歓迎】 |
想定年収 |
456万円 ~ 682万円 |
経理求人/創業70年超企業/将来の管理職候補
仕事内容 |
・月度締め、年次決算 ・決算書・計算書類の作成・管理 ・グループ企業を含めた会計・財務業務 ・伝票処理 ・勘定科目の残高管理 ・資金計画・調達・管理 ・固定資産管理 ・税務調査対応、各種申告業務 など |
必要な経験・能力 |
【必須】
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想定年収 |
400万円 ~ 500万円 |
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必要な経験・能力 |
【必須】
【歓迎】 |
想定年収 |
504万円 ~ 633万円 |
建設業経理士と日商簿記の違いは?
建設業経理士と簿記検定は、どちらも基本的には「簿記」というルールを同じように学ぶことから、大枠だけを見ればほとんど変わりはありません。
簿記検定の中で大きな知名度を誇る、日商簿記検定試験についても同様です。
ただ、建設業経理士は「建設業特化型」の知識を試す試験であることから、一般的な業種と異なる概念・時間のとらえ方について理解が必要となります。
そのため、日商簿記で使用されない勘定科目が用いられており、それぞれの意味合いを理解しながらきちんと仕訳・会計処理ができるかが問われます。
特に注意して理解したい勘定科目の一つが「未成工事支出金」です。
これは、日商簿記における工業簿記では「仕掛品」に該当するものですが、仕掛品が製品となるスパンと、建設中の建物が完成するスパンは大きく異なります。
種類にもよりますが、多くの工業製品は1個あたり当日~数日で完成するのに対して、建設工事は完了までに数年かかるのが一般的です。
今年始まった工事は、ほとんどの場合当年中に会計処理を完了させることができません。
売上が立つまでの時間が長い分、未成工事支出金はどんぶり勘定になりがちで、しばしば在庫分の計上を調整して利益を調整するケースも見受けられます。
正しく在庫の金額が把握できていないと、現段階で利益が出ているのかどうか正確なところが分かりにくいため、最悪の場合赤字になっていることに気付かないまま工事が完成してしまうおそれもあるのです。
建設業経理検定試験は、そういった建設業独自の事情を勘案した上で、費目の違い・処理方法につき特殊性を加味しています。
入札に有利な人数頭としてのニーズだけではなく、建設業という分野で経理のプロフェッショナルであることを証明できる、希少な資格の一つと言えるでしょう。
日商簿記2級と建設業経理士、ダブルライセンスの狙い方
試験概要を確認した上で、これから建設業経理検定試験を受験しようと志す場合、最初から建設業経理検定試験を受けるよりは、まずは日商簿記検定試験にチャレンジすることをおすすめします。
すでに建設業で経理職として働いている場合は、建設業独特の用語・慣習・仕訳などに慣れているため理解が早いかもしれませんが、簿記そのものをよく理解していない人にとっては、なかなかイメージをつかむのが難しいでしょう。
そもそも、建設業経理検定試験において必要なものは、日商簿記2級程度の知識・建設業会計に関する知識です。
また、日商簿記2級を取得していれば、建設業以外の業種でも幅広く資格が評価されますから、可能性を広げる意味でもダブルライセンスを狙った方がメリットは多いはずです。
資格取得の順番に悩んでいる人は、先に日商簿記2級を目指してみましょう。
まとめ
建設業経理検定試験を受け、建設業経理士2級以上のレベルに合格すれば、建設業界で一目置かれる存在になれます。
資格そのものの信頼性も高く、入札で有利になるなど、企業側が有資格者を雇うメリットも明確な点がポイントとなる資格です。
ただし、1級は評価が高い反面、合格は決して易しいものではありません。
独学では合格が難しいという意見もあるため、通信教育や予備校などを使い、効率的に合格を目指すのも良いでしょう。
自身の評価を高めることができる資格なので、キャリアアップや好待遇への転職を実現したい人は、一度挑戦してみてはいかがでしょうか。
建設業経理士の資格を活かした転職活動には、是非転職エージェントを利用してみてください。
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【参考URL】
・一般財団法人建設業復興基金「建設業経理検定」
・公認会計士等数 評価テーブル
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、リクルート広告代理店に新卒入社し、中小企業、飲食・小売店などに向け、求人広告営業に従事。
その中で、実際に転職をされていく方などの生の声や気持ちの変化・実情などを知りたいと考え、MS-Japanに入社。
その後はキャリアアドバイザーとして、主に20代~30代の経理財務・会計事務所スタッフを中心に担当する。
経理・財務 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 税理士科目合格 ・ USCPA を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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