2023年10月19日

工業簿記とは?商業簿記との違いや難易度、求人例など

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工業簿記は、その名称から「工業に関する簿記」と解釈されますが、商業簿記とどのような違いがあるのでしょうか。
日商簿記検定では、2級から商業簿記に加えて工業簿記も試験範囲となります。
これから簿記2級を目指す方々にとって、工業簿記の特徴や難易度は気になるところでしょう。
この記事では、工業簿記と商業簿記の違いに着目し、合格率から見る難易度や原価計算について掘り下げていきます。
工業簿記の知識を活かせる求人例も含めて、メーカーを将来のキャリアに見据える際の情報源としていただければ幸いです。

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工業簿記とは

工業簿記とは

工業簿記は、製造業を対象とする簿記の一種であり、商業簿記とは異なり、製品の製造過程における会計処理と原価計算を中心に扱います。
製造業は、単に商品を仕入れて販売するだけでなく、製品を生産するために必要なコストを正確に把握し、効率的な原価計算を行う必要があります。
特に材料費、労務費、経費が生産活動にかかるコストに該当するため、これらを処理し、製造原価を算出するのが工業簿記の目的です。
自社商品の売上を収益として計上するためにも、その商品がどれだけの原価を持つかを社内で明確にしておかなければなりません。
製造プロセスの透明性を高め、収益最大化やコスト管理のための基盤となる工業簿記は、製造業に欠かせないしくみなのです。

簿記2級以上で出題

簿記2級の試験は、「商業簿記」と「工業簿記」の2科目が出題されます。

工業簿記では、製造業の生産活動に関連する会計処理を中心に、原価計算の複雑性や製造プロセスの理解力が問われます。
具体的には、原価計算方法の選択、製品別の原価計算、WIP(仕掛品)の取り扱い、製造原価報告書の作成などが含まれます。
工業簿記の範囲だけで簿記2級試験の4割を占めるため、試験の合格に向けては十分な学習が必要です。
特に製造業特有の用語や概念に慣れる必要がありますが、基礎の理解と継続的な学習によって工業簿記をマスターすれば、簿記2級合格への足掛かりとなるでしょう。

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工業簿記と商業簿記の違い

工業簿記と商業簿記には共通点もありますが、それぞれ異なる分野に特化した簿記手法です。
両者の主な違いについて、「対象業種」、「原価計算期間」、「勘定科目」、「財務諸表・損益計算書の表記」、「学習内容」の5項目で見てみましょう。

異なる項目 工業簿記 商業簿記
対象業種 製造業や加工業などの物を生産する業種に適している。
原材料から製品が生産される過程を追跡する必要がある。
商品を仕入れて販売する業種に適している。
商品の仕入れと販売の流れを記録。
原価計算期間 会計期間は、通常1年間。
それとは別に、原価計算期間が1カ月単位に設定されている。
(製品の原価に問題がある場合でも迅速な改善が行えるようにするため)
会計期間は、同じく通常1年間。
(補足:会計期間は、日本では4月から翌年3月が多く採用されている)
勘定科目 主に、材料、仕掛品、製品、労務費、経費、製造間接費、月次損益の7科目。
製造過程に関する詳細な科目が中心。
資産、負債、純資産、収益、費用に分類されている。
商品の流通過程を反映する科目が中心
財務諸表・損益計算書の表記 「当期製品製造原価」と表記される。
生産過程の工程ごとに原価を算出し、それを反映する形で表記。
「当期商品仕入高」と表記される。
仕入れと販売の過程での原価や、在庫の変動を重要した表記。
学習内容 暗記よりも計算方法の理解が重要。
特に、製造プロセスや原価計算方法、製品の工程別原価の割り当てなどの知識が求められる。
知識の範囲は、「狭く深く」。
暗記力と難解な文章を理解する読解力が必要。
勘定科目の暗記や、簿記の基本的な考え方を理解する能力が重視される。
知識の範囲は、「浅く広く」。

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工業簿記の難易度

工業簿記の難易度について、日商簿記検定の2級と3級の合格率の違いをもとに検討してみましょう。

まず、工業簿記は3級には出題されず、2級から出題される科目です。
2級の配点は、商業簿記が60点、工業簿記が40点で、100点満点中70点以上が合格ラインとされています。

2023年6月の検定結果を見ると、合格率は次のとおりです。

3級 34.0%
2級 21.1%
1級 12.5%

このデータから明らかなように、 3級から1級に進むにつれて合格率は下がっています。
特に3級と2級の合格率の差は顕著で、2級の難易度が高いことを示唆しています。

一方で、工業簿記と商業簿記の難易度については個人差があります。
工業簿記は計算が多いことから、数学に強い人は比較的理解しやすいとされていますが、逆に数学が苦手な人は苦戦することもあるでしょう。
暗記項目が多く範囲も広い商業簿記は、文章を理解し、情報を整理する能力が求められるため、国語力や読解力が重要です。
暗記が得意な人にとっては商業簿記の方が適しているかもしれませんが、国語や暗記が苦手な場合は難易度が高く感じられるでしょう。

合格率のデータと内容から判断すると、工業簿記が出題される2級は難易度が高く、出題されない3級よりも難しいことがうかがえます。
また、財務諸表における工業簿記と商業簿記の表記方法の違いも、簿記2級の難易度を高めている要因とされています。
ただし、受験者個々の能力や興味に応じて、難易度の感じ方は異なることを留意しておきましょう。

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工業簿記の原価計算とは

工業簿記の原価計算とは

製造過程でかかった原価を計算するのが原価計算

原価計算とは、製品を製造する過程でかかった原価を正確に算出するための手法です。
この原価には、材料費だけでなく労務費や経費なども含まれます。
原価計算を通じて製品の実際のコストを明確にすることで、生産プロセスの効率向上や無駄の削減につながり、企業の収益性に寄与します。

原価計算の流れ

複雑な原価計算を正確に行うためには慎重な手順が必要です。
一般的には次の3ステップで原価計算が行われます。

第1ステップ:費目別計算
第2ステップ:製造間接費の配賦
第3ステップ:製品原価の計算

費目別計算
まず、製造原価を材料費、労務費、経費の3つに分類し、それぞれの消費額を算出します。
算出の対象は、材料費であっても材料を仕入れた額ではなく、消費した額です。
次に、算出後の材料費、労務費、経費の中から、特定の製品に直接関連するものを「直接費」に、不明確な場合は「間接費」に分類します。
さらに、直接費を「仕掛品」に、間接費を「製造間接費」として振り替えます。

製造間接費の配賦
製造間接費を、人員数や売上高、稼働時間などの基準に基づいて、各製品に配賦(配分)します。
この配賦により、製造間接費が「仕掛品」勘定に振り替えられます。

製品原価の計算
「仕掛品」の中で完成した製品を「製品」勘定に振り替えます。
これにより、最終的な製品原価が計算されます。
製品が販売された場合は「売上原価」として振り替えられ、収益と費用の対比が実現します。

以上の流れに従って原価計算を適切に行うことで、企業は正確な原価情報を得て、経営判断や価格設定などの重要な意思決定を行うことができます。 原価計算のプロセスは定期的に精査し、生産効率や精度を向上させるためにも費用構造の変化に柔軟に対応することが重要です。

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工業簿記の知識を活かせる求人例

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仕事内容
経理マネージャーとして、下記業務を中心にお任せいたします。
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必要な経験・能力
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・経理の実務経験(目安5年以上)
【尚可条件】
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簿記2級以上
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・工場経理業務経験
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・中期計画・予算策定
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・業務統制に関わる業務
など
必要な経験・能力
【必須】
・経理業務のご経験(3年以上目安)
・英語の読み書きに抵抗がない方
【歓迎】
・原価計算、原価管理のご経験
・製造業界での経理経験
想定年収
450万円 ~ 600万円

まとめ

工業簿記は、製造業に欠かせない専門的な会計知識です。
商業簿記と合わせて習得することで、経理スキルが一段と強固なものになるでしょう。
合格率から見ると、やや難易度は高いかもしれませんが、その分、身についた知識を活かせる場面は広がります。
自動車や電子機器、化学、鉄鋼、食品加工など、多彩なメーカーで工業簿記のスキルが求められています。
今後選択するキャリアへの道を明るくするためにも、工業簿記の学習を着実に進めていきましょう。

この記事を監修したキャリアアドバイザー

椿 大樹

大学卒業後、外資系小売り業に就職、セールスマネジメントや採用、教育研修を経験。
人がいかに業績を左右するかについて認識し、現職のMS-Japanに転職する事を決断。
入社以来、東海エリアのキャリアアドバイザーとして、キャリアチェンジやスキルアップを目的とした若年層の支援を中心に担当しております。

経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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