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第10回2005/07/12
昨今の日本社会において、従来の年功序列制・終身雇用制度といった人事システムが崩壊し、成果主義・年俸制等の新しい人事制度が多くの企業に導入されています。しかしながら、その新しい人事制度において、従来型の一人の社員を直属の上司が実績や能力を判断するという、一方向の評価ではなく、「納得性」「公平、正当性」をより高め新しい人事制度を機能させるため、多角的な方向から評価を行うことにより、公正な評価を行う多面的評価制度が注目されております。今回はその多面的評価制度について焦点をあて、解説いたします。
1.「多面的評価制度」とは
なるべく多くの角度から判断を受け入れることにより、公平な評価ができる手法です。直属の上司だけではなく、同僚、部下、他部門、場合によっては外部の顧客、取引先担当者等が評価・観察するもので、様々な立場からの評価によって、評価自体の客観性・透明性・納得性等の精度を高める事が可能になる評価制度です。多くの視点より評価することから360度評価とも呼ばれております。評価の指標としては、能力・情意に重点を置く場合や、コンピテンシーの視点における指標設定など様々なものがあります。実際にアメリカのフォーチュン1,000社のうち、実際にこの多面的評価制度を何らかの形で導入している企業数は9割を超えるとも言われております。
2.「導入のメリット」(1)組織業績の向上・周囲の社員が相互に評価し合うシステムのため、組織内に良い意味で緊張感が生まれ、常に見られているという意識が、会社側や周囲からの期待に応えようとする望ましい行動へ繋がります。・多面的に観察・評価することで、その人材の能力を総合的に判断・把握することが可能となり、人材の適材適所を見分け、配置することができます。
(2)社員のモチベーションの向上・上司だけでなく、日頃一緒に業務を遂行している人に評価されることで、評価の納得性が高まります。・目に見える業績以外に、本人が自分の認識とのギャップや、課題および周囲の期待を認識することで、能力開発や行動改善・変革につながります。
(3)組織風土の醸成・評価項目をオープンにすることで、社員は常に会社が期待する姿勢や行動規範などを理解することになり、社員を会社が期待する方向にリードしていくことに繋がります。・多くの社員が評価者となることで、会社側が期待される社員像を認識する機会を創ることになり、社員の意識付けのきっかけになります。・フィードバックミーティング実施などで多くの社員が評価しあい、また議論を交わすことで組織内のコミュニケーションの質量が向上します。
3.「導入のポイント」
(1)目的を明確にする管理側は導入の際、評価の方法だけを前面に出して実施するのではなく、どのような効果を期待して、この手法を導入するのか等の制度導入の背景や評価項目を明確にし、社員に伝え理解させる事が重要です。
(2)評価基準の統一を徹底する妥当性・一貫性のある評価尺度を予め設定し、決められた評価項目が同じ判断基準で評価できるよう、評価者への基準統一・訓練を行う。特に不可視的な個人的資質のみならず、職務遂行上で不可欠なスキルを、客観的に行動評価するように、評価項目設定や評価基準として統一します。
(3)本人へのフィードバックを工夫する評価結果のフィードバックを行う際には、自己啓発や能力開発のきっかけづくりを目的として必ず本人に結果を報告し、何をどうあるべきか議論する場を設ける。また職場の上司や同僚を巻き込んだフィードバックシステムを導入し、組織活性につなげるオープンなコミュニケーションを実施するのも効果的です。
(4)名称を工夫する「評価」という言葉だけに、「査定」という認識で捉えられる社員もいます。たとえば、行動診断表やリーダーシップサーベイなど、後々の面談やフィードバックミーティングの効果を考え、名称を工夫するのも良いと思います。
(5)評価者の匿名性評価者は本人が決めるケースも多いため、誰がどんな評価をしたかが分かったとき、相手との人間関係が悪くなるのを心配する者もおります。よって、評価表の配布などは、評価者ごとに送付し、回収等は人事や研修部門などが受け取るよう配慮なども必要です。
(6)評価結果は極力処遇に反映させない多面的に評価をするため、納得感の向上に繋がりますが、評価平均値は所属する組織風土に左右されるなど、バイアスがかかることや、本人の周囲への関わりにより、予想以上に上下するケースも多く、その評価がそのまま処遇に反映されることは、逆に納得感の低下につながる可能性もあり、あくまでも処遇反映の上司評価時の参考資料にとどめるのが理想です。
4.「多面的評価制度を活かすポイント」
従来の人事評価制度は、どうしても主観的になりがちでした。そのためフィードバックもしにくく、動機付けも弱かったのです。これは、上司と部下では主観の違いがあるからです。そのギャップを解決するために、考えられた制度が「多面評価制度」ですが、「主観が集まれば、客観に近づいていく」というのがこの評価制度の考え方であります。しかしながら、多面的評価は常に人間関係の軋轢が生じるリスクも潜んでいるため、あくまでも問題行動や、ローパフォーマンスの原因がどこにあるのかを組織として認識し、また本人に気づかせたうえで、それをポジティブに改善していくための「手段」として使われるべきであると考えます。
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