「叱る」と「怒る」から見る社員教育

第62回2010/03/15

「叱る」と「怒る」から見る社員教育


「叱る」と「怒る」から見る社員教育

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新卒採用のサポートを手がける企業が「内定が決まっている学生」400名程を対象にアンケートを行ったところ、回答者の半数以上が「叱らない上司」を求めているという結果が出たそうです。いわゆる若者達が「叱る上司」よりも「叱らない上司」を求めている背景もあり、最近の企業のマネジメントからは厳しさが減ってきており、叱れない経営者や管理職が増えつつあるようです。

 

しかし、企業が成長するには良い人材が必要であり、良い人材を育成する為にはしっかりと社員教育を行う必要があります。人材の育成ができていない企業は、社員の能力やモチベーションが向上せず、社員も定着しない為、企業の成長が止まり衰退してしまう可能性もあります。人材を育てる必要がある以上、嫌われたくないから叱らない、とは言っていられません。
そこで今回は社員教育において「叱る」ことから得られる効果とは何か、について考えてみたいとおもいます。

 

社員教育の効果・メリット
そもそも社員教育から得られる効果にはどんなものがあるのでしょうか。まずはこちらについて、主なものをピックアップしてみましょう。

 

  1. 知識や能力のスキルアップ
    業績をアップさせる為には、社員の個人個人の能力アップが不可欠です。社員のスキルや知識の向上は、今までやってきた仕事の効率化に繋がります。効率よく仕事を回せるということは、新しい仕事を始めることが出来ることにもなり、さらなる業績アップが期待でき、モチベーションアップにもつながります。モチベーションが低い社員が多いと業績にも影響が出てきますが、社員教育を行うことは、そのような社員のモチベーションを向上させるメリットがあります。
    社員教育を通じて、新しいスキルの取得や新しい目標の発見が出来ると、自分の成長を意識し始めることに繋がります。それによるモチベーションの向上は、本人だけでなく他の社員へも良い効果をもたらし、業績に対し良い影響が期待できます。
  2. 主体性の発揮
    近年では、上司や先輩から言われた仕事だけを行う、いわゆる「指示待ち社員」が増えてきていると言われています。「指示待ち社員」が多くいる企業では主体的に動く社員だけが動き、動かない社員は全く動かないような両極端な状況になっています。社員教育を行うことは、社員が自分達の目標や目的を明確にし、指示を待つのではなく自ら動くよう意識することに繋がります。
  3.  企業文化の継承
    同じような商品を取り扱っている企業であっても、それぞれの企業には固有の企業理念や経営方針、ノウハウなど様々なものが存在しています。社員教育を行い、企業理念や経営方針などの意識を共有することで、企業文化が継承され、独自に社員の人材育成を行うことが可能となります。企業文化を継承すること、独自の社員を育てることは、企業の義務と言っても良いでしょう。そうして育った社員は企業の財産であり、彼らの存在が組織力の強化や企業のさらなる成長へと繋がります。

 

上記のように、社員教育を行うことで得られるメリットは様々ですが、時間・コストが掛かること(掛けた費用が成果に繋がるかが不明確なところがあり、先行投資となってしまうこと)やノウハウがわからないこと等がネックとなり、多くの企業が社員教育に注力できていないのが現状です。特に、社員教育の方法やノウハウがわからないという点が大きな課題となっておりますが、そうした中でも冒頭でお伝えしたように、「厳しさを持ったマネジメント」を苦手とする方が多いようです。

 

そこで、次は今回のテーマである「叱るマネジメント」のポイントをお伝えいたしますが、その前に「叱る」と「怒る」の違いについて考えてみたいと思います。

 

「叱る」と「怒る」から見る、社員教育の注意点
社員教育のマネジメントにおける「厳しさ」を扱うには、「叱る」と「怒る」の違いについて理解する必要があります。まずはそれぞれについて解説いたします。

 

  • 叱るとは?
    相手のことを考え、相手に非や責を理解させるために働きかけることであり、双方向のコミュニケーションと言われています。相手をより良くしようとする注意やアドバイスを、あえて声を荒げたり語気を強めたりして相手に伝える動作です。つまり、叱ることは感情が抑えられることにより、相手が言われたことを受け入れる気持ちが整います。
  • 怒るとは?
    一般的に自分の感情を表現することで、一方通行の感情表現であると言われています。自分自身が腹を立てたことを相手にぶつけることで、自身の目的が果たせればそれでよく、相手がどのように感じるか等を気にしない動作です。つまり、怒ることは感情的になるだけなので、相手に反発を招く結果になります。

 

上記をご覧の通り、社内教育においては「怒る」ではなく「叱る」で厳しさを表さなくてはなりません。使い方を間違えると、社員が育たないどころか、組織に悪い影響を与えてしまう可能性もあります。例えば、うまく部下を「叱る」ことで良いマネジメントが出来た場合、下記のようになります。

 

  • 事例1.(叱る成功例)
    A社では、管理職Bは部下Cがおかしてしまった失敗を、大きな問題として捉えていました。今後、このような失敗が続いてはCの成長に関わると考えたBは、Cの今後の成長を考え、Cにその理由・背景を考えさせた上で、おかしてしまった失敗について叱りました。その後、Cはその失敗を糧に大きく成長し、その点を気づかせてくれたBに対して大きく感謝したそうです。

 

続いて、部下を怒ってしまったことでマネジメントに失敗した例も見てみましょう。

 

  • 事例2.(怒る失敗例)
    X社では、管理職Yが部下Zに指示を出すものの、思うように動かないZに対して、常にイライラしていました。ある時、ついにZに対して、感情を抑えきることができず、他の社員の前で、感情のままに怒鳴ってしまいました。怒鳴られたZはその上司Yに対して嫌悪感を持ち、自信も無くし、その後、一切の相談もせずに仕事を進めるようになってしまいました。他の社員もそれを見ていた為に、職場の雰囲気も険悪となり、もちろん成果など出ない状況になってしまったそうです。

 

あくまでも上記は一例ですが、「叱る」と「怒る」の違いをしっかりと理解し、相手や組織の状況に合ったマネジメントを行えば、必ず良い効果が現れるでしょう。

 

叱る際のポイント
叱る際の一般的なポイントについて、例を挙げてみます。

  • 叱る際には、事前に褒めることが効果的(「3つ褒めて1つ叱る」「褒める8割、叱る2割」と言われ、褒めることは相手に心を開かせることにつながります)
  • 叱る際には抽象的な表現ではなく、具体的に叱ることを心掛ける
  • 相手の性格や人格ではなく、行為や事象を叱る
  • 叱ったあとはきちんとフォローする

叱る際のポイントには上記のようなものがありますが、最終的には人と人との信頼関係が物を言います。日々のマネジメントを通じて組織内に信頼関係が出来上がれば、自ずと組織は育ち、人材も育ちます。

 

まとめ
企業の成長において、社員教育は多くの効果・メリットがある非常に重要なことです。
社員教育を社内にて行う際には、ただ「褒める」だけでは社員は成長せず、企業の成長にも繋がりません。時には厳しくすることも必要であり、厳しく教育する中でも、「叱る」と「怒る」を同様に考えずに、違いを理解することが重要です。「褒める」と「叱る」を上手く使い分ける事が出来れば、企業へ貢献してくれる人材を育てることになり、それが企業の成長に繋がります。また、そうして育てられた人材は、自身が育てられた教育方法・ノウハウを活かして新たな人材を育てるので、更なる企業の成長・発展へと好循環を生み出すこととなります。

 

部下に嫌われることや、職場の雰囲気を悪くする事を恐れて、「厳しさ」を出す事に消極的になってしまっていませんか?
会社の為にも、社員の為にも、「叱る」マネジメントに取り組んでみていただければ幸いです。

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