3分でわかる最新人事コラム

第20回2006/06/14

「採用・雇用」

現在、緩やかにではありますが景気の回復が感じられる状況になってきており、
各企業で積極的な採用活動が行われ始めています。
それに伴い転職市場は、求職者優位の売り手市場の現象がおき、
優秀な人材は複数企業から内定を獲得する状況になっています。


このような状況下で、人材確保を成功させるためには、
採用過程において求職者に対する適切な対応が必要になります。


そこで今回は、ベンチャー企業が良い人材を確保するためのポイントと注意事項を、
「採用・雇用」においての基本的な事項から解説いたします。


1.採用におけるポイントは

既述の通り現在、転職市場は求職者優位の売り手市場になりつつあります。
その中で、即戦力となる人材の確保が必要なベンチャー企業においては、
優秀な候補者との良い出会いを確実に採用に結びつけることが必要です。
その為には、採用の過程で着実に求職者の心を掴んでいかなければなりません。


そして、心を掴む採用活動を心掛けることで、求職者はモチベーションを高くして入社し、
積極的な活躍をしてくれるはずです。
ここでは、採用過程(①求人募集②選考③採用内定④入社)に沿って、
求職者の心を掴みモチベーションを上げて良い採用をするポイントを解説します。


(1.)求人募集
求人募集においてのポイントは、自社の経営課題と転職市場の動向を把握することです。
ベンチャー企業として求めたい人材像は、若くてヒューマンスキルが高く、
成長意欲を持ったポテンシャルの高い人材で、
且つある程度の実務経験もある即戦力的な人材だと考えます。
しかし、全てを満たす人材はそもそも母数が少ないはずです。
そこで、以下の点を認識することが必要になります。
まず「人材採用で解決できる経営課題」から、
優先的に取組むべきものを洗い出すことが必要です。
そして、その課題に対応した人材が実際の転職市場にいるのか、いないのか。
いるならばどのような志向を持っているのか。
いないならばどのような人材ならいるのかを把握しましょう。
特に求職者の転職活動の動機や目的の把握は、
後の採用過程でも重要になるのでしっかり掴んでおく事が大切です。
企業としては経営課題の全てを解決出来る人材を採用したいところですが、
市場にいない人材・少ない人材を探していても、
時間がかかるばかりで経営課題の解決は遅れるばかりです。
そこで、転職市場の動向を把握する為に、
例えば、経営者向けや人事向けの外部セミナーに参加するのも良いでしょう。
また、市場動向に敏感な人材紹介会社に相談するのも効果的です。


(2.)選考
選考においてのポイントは、相互理解を深めることです。
企業の魅力を伝える為には、
一方的な面接は避けて求職者に歩み寄った面接をするのが効果的です。
ベンチャー企業への転職を行う求職者は、
成長のチャンスや将来の大きな対価への期待を感じていると同時に、
企業の今後や組織体制に対する不安も感じています。
面接を通して期待感を高め、不安を払拭するよう努めることが大切です。
ベンチャー企業で採用に成功している企業に話を聞くと、
多くの採用担当者が、面接は応募者に自社をアピールする場と心得ています。
例えば、質疑応答の時間を多くとり、相互理解を深められるように努めています。
また、通常の選考過程に捉われず、求職者のニーズや状況に応じて、
複数名の社員に会わせたり、一次選考から社長と会わせたりと工夫をこらしています。


(3.)採用内定
採用内定においてのポイントは、
採用を決定する前段階で求職者の本音を確認しておくことです。
採用内定の段階は、お互いをどう思ったのか評価する場です。
理想は、最終面接前後で、求職者が直ぐに入社したいという気持ちになっており、
採用内定を通知すれば、求職者が即意思を決めることが出来る状態です。
しかし、実際は、求職者の本音を把握出来ていないこともあり、
採用内定後、返事を延ばされ、最終的に辞退となってしまうことがあります。
これを防ぐ為に、
まず、選考過程で企業に対する求職者の要望は遠慮がちであることを理解する必要があります。
これを理解した上で、改めて最終面接の段階で本音を確認しましょう。
企業によっては、最終面接後に改めて求職者の本音を聞く場を設けたり、
他企業からの条件を確認し採用内定のタイミングを図ったりと工夫をしています。
このように求職者の本音を聞きだしておくことで、
条件通知でのミスマッチを避けるだけでなく、
仮に、求職者が求めるレベルに至らない条件提示であっても、
その分を別の条件で補うことも出来るはずです。


(4.)入社
入社においてのポイントは、確認と入社までのフォローです。
企業としても求職者を入社させることが目的ではないはずです。
入社後、長期的に活躍し、企業に貢献してもらうことが本来の目的であるはずです。
良い採用を行っている企業では、
本人が入社意志を表明した段階で、再度話し合いの場を設けています。
その場で、求職者が十分に企業のことや業務内容を理解しているのか、
待遇に満足しているのかを確認するのです。
場合によっては、挨拶程度の内容で終わるケースも有りますが、
それだけでも求職者に対して、企業側が喜んで迎え入れているという姿勢が伝われば、
求職者のモチベーションも上がり、
入社直後から期待以上のパフォーマンスを出してもらえるのではないでしょうか。
確認面談を終えた後も、入社までに期間がある場合は、
連絡を密にし、会食やオフィス見学などの場を設けて求職者と接点を持つようにしましょう。


以上のようにベンチャー企業の採用では、
求職者の心を掴みモチベーションを高めることで、優秀な人材の確保が可能になります。
但し、求職者の心を掴むことを意識し過ぎての過度なアピールは、
入社前後のミスマッチにつながります。
こうした採用上のトラブルについて次の項にまとめました。


2.採用上起こりやすいトラブル

良い形で採用が進んでも、入社前後でトラブルが起きる場合があります。
ここでは、ベンチャー企業で起こり易いトラブルを2つ紹介します。


(1.)認識のズレによって起きるもの
ポジションや業務についての認識のズレにより、決まっていた話が破談になったり、
入社後直ぐに退職してしまったりすることがあります。
これは、求職者に対して、組織体制や構成メンバーの役割分担、
課題・中長期的なミッションなどを説明しておくことで予防出来ます。


(2.)状況変化によって起きるもの
変化の激しいベンチャー企業故に、求職者が入社するまでの期間に、
組織体制が変わり当初の予定とは異なる条件での採用になることがあります。
企業の認識としてはベンチャーなのだから当然起こることと考えがちですが、
求職者からすれば人生の中での大きな決断です。


このような状況が起きた際は、早い段階で求職者と話し合いを持ち、
状況の説明と求職者のニーズを聞く場を設けることで、入社後のトラブルが避けられます。


採用上のトラブルを避ける為に、求職者と十分なコミュニケーションをとることと、
誠実な姿勢で採用活動を行うことが大切です。
基本的には、企業の論理だけ考えず、
求職者心理で対応をすれば多くの場合は回避出来ます。


3.雇用する上での注意事項 

最後に、企業側が応募者の雇用を決めた段階で必要になる内定の通知について、
法的側面から解説しておきます。
採用内定通知にあたっては、企業側は求職者に対して労働条件の明示を行う事が、
労働基準法によって定められています。
必ず明示すべき労働条件として以下の5つがあります。


(1.)労働契約の期間に関する事項
(期間の定めのある労働契約の場合はその期間、期間の定めがない労働契約の場合はその旨)


(2.)就業の場所及び従事すべき業務に関する事項


(3.)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、
休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
(基本賃金の額、手当ての額又は支給条件、時間外、
休日又は深夜労働に対して支払われる割増賃金について割増率を定めている場合には
その率ならびに賃金の締切日及び支払日等)


(4.)賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項


(5.)退職に関する事項、退職の事由及び手続き、解雇の事由及び手続き等を明示


これら以外の事項が必要な場合は、口頭説明で良いとされています。
但し、求職者の視点で考えると可能な限り書面で明示する方が良いでしょう。
安心して入社意志を決めやすくなります。
因みに、労働条件の明示は就業規則などと重複する部分が多く、
採用内定通知書面に盛り込み、明示することもあります。


4.総括 

ベンチャー企業が良い採用を行うには、一筋縄ではいかない課題が多々あります。
また、自社だけの努力では解決し得ない課題も多くあるでしょう。
企業は求職者の視点に立って採用を行う事が必要です。
また現在は、採用に関わるビジネスを展開する企業が多くあります。
そうした企業をパートナーとして上手く利用することで、
良い提案やサポートを受けることも可能です。


また企業の採用活動においては、労働者の立場を守る観点で法律の解釈と適応が行われます。
新卒採用、中途採用問わず、採用の際は慎重な対応が求められています。
企業は応募者と十分な話し合いによる相互理解を深めることが大切です。


勿論、法規制に則った採用が前提になりますが、
誠意ある対応が応募者との良い関係を構築します。
そして、結果的にそうした行為が、応募者が入社する場合も、
入社しない場合も企業の評価を高めることに繋がるのです。

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