社労士の年収はいくら?実際に稼げる資格なのか調査してみた
社会保険労務士(社労士)は、難関試験を突破しなければ就業できない士業の一つとして知られており、自分の事務所を構えている社労士も数多く存在します。
しかし、どのくらいの年収がもらえるのか、稼げる士業なのか、その詳細を知らない方も多いのではないでしょうか。
実際のところ、社労士の年収は働く場所や働き方によっても変わってきますが、高年収を得るチャンスは十分にあります。
この記事では、社労士の年収事情についてデータを交えて詳しく解説します。
社労士の働く場所は大きく3つ
社労士が働く場所としては、大きく次の3つがあげられます。
- ・社労士事務所(勤務)
- ・一般企業の人事・総務
- ・社労士事務所(開業)
以下、それぞれの特長について解説します。
社労士事務所(勤務)
社労士として勤務する上で、最も代表的な職場の一つが社労士事務所です。
知名度の高い社労士事務所では、個人・企業を問わずたくさんのクライアントを抱えており、人事・総務関連の相談や依頼を数多く受けています。
資格取得後に実務経験を積むにあたり、社労士事務所は非常に魅力的な職場です。
なぜなら、社労士として働く上でのノウハウを学びつつ、日々の実務を通して自らのスキルアップにつなげやすいからです。
しかし、社労士事務所の求人は決して多いとはいえず、実務未経験者がいきなり社労士事務所で働こうとしても、なかなか採用されず苦労する可能性があります。
将来的に開業を目指す場合、まずは社労士事務所での勤務を目指したいところではありますが、不採用になることも想定して次善の策を練っておくことをおすすめします。
一般企業の人事・総務
社労士事務所への勤務が難しい場合、次善の策として“一般企業の人事・総務”で働くことも検討してみましょう。
企業で働く社労士は「勤務社労士」と呼ばれ、労働問題への対策が重視される近年においては、勤務社労士の需要が高まる傾向にあります。
外部の社労士と顧問契約を結ばず、社内で労働問題等を解決することを目的として、社労士を雇おうと考える企業も少なくありません。
また、企業で勤務する社労士側にもメリットがあり、独立した場合に比べて収入が安定しやすく、福利厚生も手厚くなることが期待されます。
注意点として、勤務社労士は「組織の一員」として働くことが求められるため、求められれば社労士以外の業務にも従事しなければなりません。
将来的に社労士事務所への転職や開業を検討している場合、経験できる職務にも注目して転職等を検討しましょう。
社労士事務所(開業)
すでに一定の実務経験を積んでいる場合、新しく事務所を立ち上げ開業することもできます。
開業にあたっては、クライアントの信頼を勝ち取れる安定した業務遂行力に加えて、新しい案件を自力で獲得できる営業力、従業員と連携をとって仕事を回していける経営力などが求められます。
社労士事務所を開業し、自分の裁量で働くことが可能になると、実質的に収入の天井が取り払われます。
努力次第で自分が望む収入を得られる喜びは、開業ならではの醍醐味といえるでしょう。
社労士の開業・勤務の割合は?
社労士の働き方は比較的多様ですが、実際に働いている社労士は、開業・勤務どちらを選んでいるのでしょうか。
2018年に大阪大学の研究グループが実施した、社労士に対するアンケートによると、次のような結果が出ています。
開業・勤務種別 | 割合 |
---|---|
開業社労士 | 66.9% |
開業社労士(副業あり) | 18.3% |
企業官公庁等勤務社労士 | 9.6% |
事務所・社労士法人勤務社労士 | 5.2% |
【出典】
・
大阪大学『専門士業の「専門性」形成のモデル構築:社会保険労務士を手がかりとして』
上記の結果では、副業も含めると開業社労士の割合は85.2%となり、およそ8割以上の社労士が何らかの形で開業していることが分かります。
また、社労士事務所・社労士法人よりも、企業や官公庁などで勤務する社労士が多くなっています。
結果を見る限り、社労士として末永く働こうと考えている場合、最終的には独立を目指すのがスタンダードなキャリアプランといえます。
とはいえ、未経験からいきなり開業して成功できるほど甘くはない世界ですから、まずは実務を経験する必要があるでしょう。
勤務社労士の年収は?
開業社労士と比較した場合、勤務社労士は年収に上限が生じやすい傾向にあるものの、選んだ職場によっては高収入も十分期待できます。
以下、勤務社労士の年収について解説します。
厚生労働省が公表する年収
厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」によると、社会保険労務士の賃金(年収)の平均は780.9万円となっています。
職場に勤務しながら得られる年収と考えると、年収800万円に近いハイクラスの年収額といえますが、残念ながらこちらの結果を鵜呑みにすることはできません。
実は、jobtagのデータは『令和4年賃金構造基本統計調査』の「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」の年収を表示しており、この中には社会保険労務士のほか、証券アナリスト、アクチュアリー、経営コンサルタントのデータも含まれています。
よって、勤務社労士のみの年収データを正確に算出した結果とはいえません。
MS Agent登録データ上の年収
MS Japanでは、人材紹介サービス「MS Agent」に登録している社会保険労務士資格保有者のデータ(2022年7月~2023年6月)をもとに、社労士の雇用実態について調査を行いました。
データ集計の結果、勤務社労士の年収は以下の通りとなっています。
職場 | 平均年収 |
---|---|
社労士事務所勤務 | 440万円 |
一般企業所属・人事 | 622万円 |
上記結果を見る限り、社労士事務所スタッフとして働くよりも、一般企業で勤務した方が年収は高くなる傾向にあります。
一般企業の人事部では、実務に精通した社労士を高く評価していることが分かります。
ただし、将来的に独立を目指しているのであれば、必ずしも一般企業を目指すことが正解とも言い切れません。
資格取得後に転職する際は、自分が職場に何を求めるのかを明確にした上で、職場を選ぶことが大切です。
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開業している社労士の年収は?
開業している社労士は、企業から給与をもらっているわけではないため、年収という形ではなく「事務所の売上高」を確認する必要があります。
以下、開業している社労士の年収について、事務所の売上高から紐解いていきましょう。
開業社労士の売上高
大阪大学『専門士業の「専門性」形成のモデル構築:社会保険労務士を手がかりとして』では、開業社労士の事務所売上高の割合(2016年度)は以下の通りとなっています。
売上高 | 割合 |
---|---|
300万円未満 | 29.1% |
300万円以上~500万円未満 | 12.8% |
500万円以上~700万円未満 | 9.7% |
700万円以上~1,000万円未満 | 11.9% |
1,000万円以上~5,000万円未満 | 27.6% |
5,000万円以上~1億円未満 | 5.7% |
1億円以上 | 3.3% |
開業社労士として独立し、事務所を営んでいくにあたっては、500万円以上の売上が立つかどうかが一つのラインになるでしょう。
また、一口に開業社労士といっても、300万円稼げない事務所もあれば1億円以上の売上が立つ事務所もあるため、成功するか否かは個人の実力によるところが大きいといえそうです。
まとめ
社労士が働く主な職場としては、社労士事務所や一般企業・官公庁などがあげられます。
しかし、実際に社労士として働いている人の多くは、開業して事務所を構えているという実情もあります。
社労士と名乗る以上は、将来的に独立を視野に入れて就職・転職活動を行いたいところですが、実務経験や経営適性がない中での独立はリスクが高いでしょう。
まずは、自分が社労士として腰を落ち着けて仕事できる職場を探し、経験を積んだ上で開業準備に着手することをおすすめします。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、幸せに働く人を増やしたいという想いから新卒でMS-Japanに入社。
上場企業を中心とした求人開拓から管理部門全般のマッチングを行い、2021年1月より専門性の高いJ事業部に異動。
主に会計事務所、監査法人、社労士事務所の担当を持ちながら士業領域での転職を検討している方のカウンセリングから案件紹介を両面で行う。
会計事務所・監査法人 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ USCPA を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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