3分でわかる最新人事コラム

第63回2010/04/12

「労基法改正時の企業の対応」

今回は、201041日施行の改正労基法というトピックスに合わせ、改めて今回の改正労基法の要旨と対応策を整理し、『労基法改正時の企業の対応』というテーマに焦点を当て、労基法改正時の企業がするべきことのポイントについて、整理してみたいと思います。

今回の改正労基法とは?

 改正のポイントは、次のⅠ~Ⅳです。

1.「時間外労働の限度に関する基準」の改正

(限度時間(月45時間)を超える時間外労働の労使による削減)

 →労使当事者は限度時間を超える時間外労働に対する割増賃金率(現在の最低法定割増賃金率25%)を引き上げるよう努めなければなりません(努力義務)

2.法定割増賃金率の引上げ

 →月60時間を超える法定時間外労働に対して、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません(義務)

3.代替休暇制度の導入

 →Ⅱの代わりに有給休暇を付与する制度(代替休暇)を設けることができます

4.時間単位年休の導入

 →労使協定により年次有給休暇を年5日分を限度として時間単位で付与することができるようになります

 

 では、なぜこのような改正が行われたのでしょうか?

 

 総務省の「労働力調査/2008年」によると、労働時間の現状は、週60時間以上(残業が月に約88時間以上)労働する労働者の割合は全体で10.0%、特に30歳代の子育て世代の男性のうち同時間以上労働する労働者の割合は20.0%という調査結果が出ています。これでは、「労働者が健康を損なう」「労働時間以外のプライベートの時間がほとんど取れていない(ワークライフバランスが崩れている)」ということになりうるかと思います。

 そこで、この課題を解決するために、

(1)    労働時間の短縮(長期労働時間の是正※特に月60時間を超える時間外労働の防止)

(2)    有給取得率の向上

 を狙って改正が行われたのです。

 

 ■厚労省内URL(労基法改正トピックス):http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/12/tp1216-1.html

 ■厚労省内URL(労基法改正の政策レポート):http://www.mhlw.go.jp/seisaku/2009/09/01.html

 

 

2010改正労基法対策とは?

 今回の改正において企業側のすべき対策は、集約すると以下の3点になります。

1.  賃金計算システムの変更

2.  就業規則・社内規定の改正

3.  労使協定の締結

 

 具体的には、

<割増賃金率との関係>

(1)    法内時間外賃金・・・×1100%

(2)    法定超え月45時間以下の時間外割増賃金・・・×1.25100%)

(3)    45時間超え月60時間以下の時間外割増賃金・・・1.25+α ←改正ポイント(1)により労使協定にて割増率を上げた場合

                                           (労使協定の締結)は、就業規則・社内

                                           規定の改正が必要とります

(4)    60時間を超える時間外割増賃金・・・×1.5 ←改正ポイント(2)により、義務として50%以上の割増賃金率に改正する必要

                                 があります

(5)    休日労働割増賃金・・・×1.35

(6)    (1)~(5)のうち、深夜労働部分・・・各々に+0.25

 

 自社内で賃金計算システムを組んでいる企業は、『時間外労働が月60時間を超えたかどうか』を判別したうえで、上記の通り、適切な割増賃金率で計算されるよう賃金システムを変更する必要があります。

 

<労使協定例、就業規則の改定例について>

 では、実際にどのような労使協定や就業規則を改正すれば良いのでしょうか。労働基準監督署のURLがありますので、自社の労使協定や就業規則をお手元に見ながら参考にして頂ければと思います。

 

  ■労使協定や就業規則を確認する場合⇒ http://www.e-roudou.go.jp/annai/kantokuk/20409/index.htm

 ■今回の労使協定全体のあらましについて⇒ http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/12/dl/tp1216-1l.pdf

 

さて、これまで改正労基法の改正ポイントとその対策を述べてきましたが、今回の改正労基法(改正ポイント)のうちⅡ及びこれに付随してⅢは中小企業には3年の適用猶予があります。Ⅰは努力義務、Ⅳはできるようになったという規定です。この3年の適用猶予は、法令上、「中小企業については、法の施行3年経過後に改めて検討する」ということとされています。

※改正労基法で言う「中小企業」とは:(1)または(2)に当てはまる企業のこと

 (1)資本金額及び出資総額が3億円以下(但し、小売業・サービス業は5000万円、卸売業は1億円以下)

 (2)常時使用する労働者の数が300人以下(但し、小売業は50人、卸売業・サービス業は100人以下)

 

 そもそも中小企業の猶予期間が設定されている理由は、(1)日本の多くの中小企業がほとんど残業のない働き方をしているため、(2)中小企業の経営体力上の問題のため、といったことが挙げられます。しかし都市圏などの一部の中小企業においては、従業員が長時間勤務している会社や、有休をほとんど取得できていないという会社も多いのではないでしょうか。これでは、今回の労基法改正の趣旨に反することになります。

 

該当中小企業が労基法対策をしないとどうなるか?

 猶予期間があるとはいえ、残業が比較的多い中小企業が対策を行わないとどうなるのでしょうか?

 200910月に厚労省のHPにより公表された、2008年度(20084~20093月)の監督指導による賃金不払残業の是正結果を見てみると、1企業当たり100万円以上の割増賃金が支払われた事案の状況は

  ・是正企業数  1,553企業

  ・是正金額   1961,351万円

  ・対象労働者数 180,730

 となり、不景気で残業が抑制されていた時期においても、100万円以上の対象だけでこれだけ多くの企業が労働基準監督署より是正監督指導を受けているかおわかりいただけるかと思います。

 

対策を行わないということは、労働基準監督署による賃金不払残業の是正監督指導を受けるということのみではありません。慰謝料という+コストが必要となるケースに発展する場合もあります。

「労働者が突然死んだ。過労死の疑いがある。」というケースをニュース等で聞かれることがあるのではないでしょうか。このような場合、労働者保護の観点から、労働者の主張のみをもって大半の場合労災認定が行われます。このようなケースの場合、労災は保険ですから企業側は実際の現金コストはそこまでかからないかもしれませんが、大半の場合、遺族より「慰謝料請求」されることとなり、莫大な現金コストが必要となります。

しかしながら、企業側が通常必要と考えられる対策(勤怠管理をしっかりと行っているなど)をしていた場合、リスクを減らすことが出来る可能性もあるのです。

 

もちろん今回の労基法改正に直接的に関連するというよりも、日常的に行っておくべき最低限のことを行わないために起こりうる、労使間トラブルということになるかと思いますが、

『対策を行うコスト < 対策を行わないことに伴うリスクのコスト』

ということを念頭におき、この機会に改正労基法の趣旨に沿う対応・対策を、検討して頂ければと思います。

 

相談場所や参考HP等(事前対策の必要性)

労働法令は昨今ますます高度化・複雑化していますが、中小企業等限られた労働者にて運営されている企業においては、日々の労働法令の改正、通達のキャッチアップは中々困難であると思います。とはいえ、健全な労使関係を構築し、企業発展に努めるには、最低限の労働法令の対策が必要です。しかも改正ののち施行後では遅く、できるだけ早期に改正があることを知り、比較的猶予期間のあるなかで対応策を練っておくこと、『事前対策』こそが重要となります。

今回のように、労基法のみならず労働関係法令は今後も改正される可能性がありますので、早期の情報のキャッチアップと事前対策のためにも、以下の対応方法を参考にされてみてはいかがでしょう。

 

■各都道府県労働局労働基準部・労働基準監督署へ相談

 →所在地について:http://www.mhlw.go.jp/general/sosiki/chihou/index.html

 ※職員の方により詳しい説明を受けることができます。素朴な疑問も対応頂けるかと思います。

 ※労働法令改正時等は、別途複数企業向けに説明セミナーを開催されています。なお、同時期にパンフレット等も郵送されてく

   るかと思いますので、極力一読するようにしてください。

 

■社会保険労務士事務所へ相談

 ※特に就業規則の改定時の文言等、専門的な相談に乗って頂くことが可能かと思います。

 ※なお、どの専門家に相談するべきか迷われましたら弊社日本MSセンターまでお問い合わせください。適切な専門家をご紹介

   致します。

 

■専門性のある人事担当者の採用

 ※社内に置くことで、労働問題におけるスピーディな対応が可能になるかと思います。

 ※すでに人事担当者がいる企業については、当該担当者にセミナー等積極的に参加させ、専門性と最新情報のキャッチアップ

   に努めさせ、それを社内にアウトプットする機会(経営層へのレポートのみならず、従業員に向けた啓蒙セミナーを行う等)を

   設けるなどが有効です。

 

 

 最後に繰り返しますが、『対策を行うコスト<対策を行わないことに伴うリスクのコスト』ということを認識し、『事前対策』を日々行い、最新情報のキャッチアップに努めて頂くことが重要かと思います。企業の規模や会社の状況に合わせた対応を、改正の趣旨にのって、まずは一歩、『できる範囲でやる』ということが必要です。

 中小企業の皆様には、猶予期間として3年ありますが、これを労使関係・労務管理を見直す良い機会として捉えて頂ければと思います。

以上

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