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第65回2010/06/14

「内定」とは?

2010年度を迎え、冷え込んでいた求人市場が徐々に活発化し始めています。
それに伴って、今まで内定を出せば比較的スムーズに意思決定をしていた求職者が、内定受諾を迷うケースが多くなることが予想されます。いわゆる買い手市場から売り手市場へ、転職市場が動き始めています。
一方で、2009年度は不景気の中、新卒者を中心に内定取り消しの問題が大きく取りざたされ、厚生労働者から内定取り消しを行った企業名が公表されるという出来事もありました。内定取り消しに関わらず、企業の転職市場での風評の悪化は、景気が良くなればなる程に人材採用の足かせになっていきます。特に競争率の高い人材の採用では、候補者側に同時に複数の企業から内定が出る可能性もあり、ちょっとした求職者に対する接し方の差がライバル企業に競り勝って、必要な人材を採用出来るか否かの分れ目となってきます。
そこで、今回は内定及び内定に関連した事項の基礎知識を改めて確認し、景気回復に伴う求人増加によって徐々に転職市場の需給バランスが整ってくる転職市場において、採用したい人材にどの様に内定を出したら効果的なのかをご紹介していきます。


内定とは
最初に内定とは何かを再確認していきます。
内定とは、「入社日から労働の権利と義務が生じる」という労使間で取り交わされる採用日前の合意を意味しています。よって、合意がなされた時点から採用日までは内定期間となります。尚、法的解釈としては、判例を元にした以下の学説が内定を定義づけています。


『企業による募集は労働契約の申し込みの誘引であり、これに応募(受験申込書・必要書類の提出)、または採用試験の受験は、労働者による契約の申し込みである。そして、採用内定(決定)通知の発信が、使用者による契約の承諾であり、これによって試用労働契約あるいは見習社員契約が成立する。ただし、この契約は始期付きであり、かつ解約権留保付きである。すなはち、採用内定通知書または誓約書に記載されている採用内定取り消し事由が生じた場合は解約できる旨の合意が含まれており、また卒業できなかった場合も当然に解約できるものである。』


上記を言い換えると、企業の求人募集に対して労働者が応募するとその時点で、労働契約の申し込みがなされたということになります。これに対して、書類選考や筆記試験、面接などを経て企業からの労働者に対して内定(採用内定)を通知すると、労働契約申し込みを承諾したことになります。
つまり、内定を通知した時点で、企業と労働者の間には労働契約が成立したことになりますので、この内定を労働者が受諾した時点で労働者は通知を行った企業の社員となったことになります。


それでは次に、採用内定取り消しについて解説していきます。


採用内定取り消し
昨年は、新卒採用に限らず、中途採用においても内定取り消しを受けたという求職者の方が例年よりも多く見受けられました。そういった方に内定を取り消された理由を確認すると、取り消しの事由として成立しているか否かが定かでないものも見受けられました。
そこで、次は上記を踏まえて頂いた上で内定取り消しに関して解説します。


既述の通り、内定を受理した労働者は、内定を出した企業の社員となりますので、内定取り消しとは「解雇」にあたります。つまり、「内定取り消し」は「解雇」と同等の認識で行う必要があります。
この認識が不足していると、思わぬところで誤った判断してしまいかねないので注意しておく必要があります。


では「内定取り消し」、いわゆる解雇が認められる事由にどういったものがあるのでしょうか。
まず、前提になる考え方として、労働基準法第18条の2に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、 その権利を濫用したものとして無効とする。」というものがあります。これはつまり、内定取り消しには「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当として是認」される必要があるということです。
具体的な事由は、内定後に判明した事情・非違行為、留年・落第・健康状態、提出書類の虚偽記載、思想・信条・労働組合活動、採用者の見込み違いによる定員超過、経営状態の悪化、が内定取り消しの事由となり得ますが、それぞれに関して以下のような条件が付いています。


◆内定後に判明した事情・非違行為
内定後に御社の採用条件に合わない事情や社会的に見て非違行為が明らかになった場合は、内定取り消しの事由になります。但し、内定を出す前に知っていたら、又は知ることが出来る立場にいたとしたら、内定取り消しの事由としては成立しません。
特に注意された方が良いのは、後者の「知ることが出来る立場にいたとしたら」という内容です。つまり面接を行ったという事実が「知ることが出来る立場」に相当する可能性があるので注意が必要です。
◆留年・落第・健康状態
採用する際に想定した通りに仕事を始められるか、また仕事を出来るかを判断する必要があります。
入社が間に合わなくなる、又は規定の就業日数をこなすことが出来なくなる可能性がある留年・落第は、事由としては成立します。健康に関しては、微妙な判断を必要とするものが多いので産業医や社労士など専門家に相談の上で慎重に判断する必要があります。
◆提出書類虚偽記載
提出書類の虚偽記載についても、虚偽が仕事に支障を及ぼすものかどうかの検討が必要です。
◆思想・信条・労働組合
従業員をこれらの理由で解雇が出来ないように、内定通知を発した後にこれらの理由で内定を取り消すことは出来ません。
◆採用者の見込み違いによる定員超過、経営状態の悪化
整理解雇の要素に合わせる必要がありますので、既に働いている常勤社員や短時間社員等々の人員削減状態を勘案して進めていく必要があります。


以上の通り、企業側が内定に関して「取り消し」を行うのは容易ではありません。


内定受諾後の辞退
一方で、内定を受ける求職者が、内定受諾後にそれを「取り消す」ことは比較的容易です。
これは日本国憲法の基本的人権の一種である自由権の中で、職業選択の自由が認められているためです。


具体的には、既述の通り内定を受けた労働者がそれを受諾した時点で、労働者はその企業の社員になっているので、内定期間中の労働者が入社を辞退することは、労働契約の解消、つまり「退職」と同義に当たります。よって、労働者が退職をすることを企業が拒めないのと同じように、労働者の内定受諾後の辞退を企業が拒むことは出来ないということになります。
これを防ぐために、内定を受諾した労働者に入社承諾書に署名・捺印をさせるという企業もありますが、もうお分かりの通り、内定受諾後の辞退は退職と同義に扱われますので、そもそも入社承諾書というのは効力が存在しないものと考えて良いかも知れません。ですから、誤解のないようご理解頂ければと思います。


では次に、内定の出し方について解説していきます。


内定の出し方
上記の通り、企業が採用内定を出すのは慎重にならざるを得ない状況にありますが、それに対して求職者側は比較的守られた立場にあるという前提があります。本来なら、時間をかけてじっくりと選考を進めるのが理想ですが、優秀な人材ほど他社の選考を通過している可能性が高く、スピーディーな選考が必要であります。ただし、勢いだけで内定を出すのは良い採用とはいえません。安全策として、内定の段階で年収や役職を一段階低い所からスタートして頂き入社後の活躍を見るというスタンスの条件提示をするのも良いでしょう。
実際に、昨今の求人数が少ない買い手市場においては、じっくり時間をかけて選考することや、求職者の希望を満たさない雇用条件で内定を出すこと、多少強引に返答期限を区切ることでも、人材採用が可能でした。
しかし、今後、求人数が多い売り手市場においては、じっくり時間をかけて選考している間に競争相手の企業に優秀な人材を採用されてしまったり、内定を出しても断られたりするケースが増えてきます。また、景気低迷下では少なかった事ですが、内定を受理した方が別会社でより良い条件を提示されて一度は受理した内定を辞退するケースも出てくる可能性があります。
せっかく出した内定を辞退されてしまうと、それまでにかけた時間は無駄になってしまいます。
又は、時間が無駄になるだけならまだしも、求人媒体を利用した場合やそれにかかった人件費を考えると大きなマイナスになることも考えられます。


これを避けるためには、スピードとリスク回避の2つを両立させる必要があります。
1. スピード・・・極力早く採用内定の結論を出し、内定を伝える。
2. リスク回避・・・内定辞退になる要素を事前に把握し、対策をしておく。
この2つはどちらかを優先しすぎても、確実な採用にはつながりません。
例えば、スピードを重視して先手必勝で内定を出しても、他に志望度の高い企業があればそちらの結果を待ちたいと判断され、断られてしまう可能性があります。一方、リスク回避を重視しすぎて内定を出すタイミングが遅れれば、他社に採用されてしまう可能性があります。


では、どのように内定を出せば良いかというと、一方的に採用するか否かを判断する選考をするのではなく、選考の各過程でしっかりと情報収集をすることと、求職者の本音を聞き出せる場づくりをした上で求職者に納得感を喚起して内定を出すことが必要です。


具体的な取り組み
では、一般の企業がどんな工夫をして内定を出しているのでしょうか。
具体的に、以下のような方法で情報収集と求職者の本音を聞き出す場づくりを実現している企業もございます。
◆会社説明会・・・選考という形式ではなく質問を受け付ける場を設けることで、本音を聞き出しやすくなり、面接では把握しきれない求職者から企業に対する評価や印象を把握出来ます。
◆選考情報の提供・・・選考通過の答えを教えるだけではなく、各段階の選考がどういった意図で設定されているか伝える事で、選考の中でより深いコミュニケーションをとることが出来ます。
◆評価の開示・・・各選考段階で、良い面も悪い面もどこをどう評価したのかを伝えることで、求職者側が採用された際の年収などの評価に納得感を喚起する事が出来ます。
◆食事会・・・求職者の本音を聞きやすくなる事はもちろん、求職者側から親近感を得る事が出来ます。
◆条件面談・・・確実に採用するための条件を確認した上で内定を出す事や、仮に条件の調整を行わないにしても求職者側の希望を満たしていない部分を説明する事で補える可能性もあります。


上記に加えて、内定を出す前に把握しておいた方が良い事項で、意外に見落としがちな事項を紹介しておきます。
◆活動状況・・・転職活動開始時期、今までに応募した件数、面接・内定した件数、現在の選考件数・段階などを把握し、転職自体への動機の高さやライバル企業の応募状況・内定状況を把握する。
◆市場価値・・・一般的にどの程度の年収が出る人材かを把握し、自社の提示予定年収との差を把握する。
◆転職動機・・・志望動機ではなく、転職を考えるきっかけになった理由を把握する。
◆家族の同意・・・本人が承諾しても、家族が反対するというケースもありますので、家族に話しが通っているか否か、また反対される可能性・要素は何かを把握する。


まとめ
現在はまだ、人材よりも求人数が少ない買い手市場の状況が続いておりますが、確実に売り手市場への変化は起き始めています。採用は一期一会ですので、本当に欲しいと思った人材を一度逃してしまうと次に全く同じ人材を採用する事は不可能です。
一口に「内定」といってもその出し方は様々です。人材採用が比較的し易いこの時期だからこそ、しっかりと内定を出す際のポイントを理解していただき、それを実践することで確実に良い人材を採用して企業成長に繋げて頂ければ幸いです。

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