法科大学院の司法試験合格率と選び方
2002年に始まった司法制度改革の目玉として導入された法科大学院制度ですが、予備試験ルート創設の影響もあって近年では志願者数が減少し、募集停止もしくは撤退した大学もあります。
しかしその一方で、現在も着実に司法試験合格者を輩出し、多くの学生を裁判官、検察官、弁護士として世に送り出し続けている法科大学院もあります。
今回は法科大学院の司法試験合格率ランキングを紹介し、法科大学院の選び方、卒業後にはどのようなキャリアが考えられるか、について解説しましょう。
法科大学院合格率ランキング
まず、法科大学院ごとの2019年の司法試験合格者と合格率を紹介します。
合格率を基準としたランキング形式で10位まで提示しましたので、ご覧ください。
順位 | 法科大学院名 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
1 | 京都大法科大学院 | 201 | 126 | 62.7 |
2 | 一橋大法科大学院 | 112 | 67 | 59.8 |
3 | 東京大法科大学院 | 238 | 134 | 56.3 |
4 | 慶應義塾大法科大学院 | 300 | 152 | 50.7 |
5 | 愛知学院大法科大学院 | 7 | 3 | 42.9 |
6 | 早稲田大法科大学院 | 252 | 106 | 42.1 |
7 | 大阪大法科大学院 | 112 | 46 | 41.1 |
8 | 東北大法科大学院 | 52 | 20 | 38.5 |
9 | 名古屋大法科大学院 | 67 | 25 | 37.3 |
10 | 広島大法科大学院 | 39 | 14 | 35.9 |
上位4位までは合格率が5割を超えています。
2011年に予備試験制度が導入され、法科大学院を修了しなくても司法試験を受験できるようになったことから、「法科大学院はもう役割を終えたのではないか」とさえ言われるようになりました。
しかし実際には、毎年多くの学生が法科大学院ルートで司法試験を突破し、法曹として働く夢を実現しているのです。
有名ではないが合格率の高い法科大学院
ランキングをみると、トップ10位内では愛知学院大学が同じ中部地方にある名門の国立名古屋大学を上回る合格率を示し、さらに大宮法科大学院大学(合格者2人、合格率22.2%)が合格率2割を超えて19位となっています。
それほど有名ではないものの、合格率をある程度保持し、実績を上げている法科大学院もあるわけです。
日本最高峰の大学である東大の法科大学院よりも、京大や一橋大の法科大学院の方が合格率は高いことからも分かる通り、大学入学試験の偏差値が高く有名大学であることは、法科大学院の司法試験合格率の高さとは相関関係にないのが実情です。
他にも13位の東海大学法科大学院(合格者数2人、28.6%)、15位の創価大学法科大学院(合格者数16人、合格率24.6%)などは、国立の難関大学として知られる北海道大学や筑波大学の法科大学院よりも合格率が高くなっています。
法科大学院の選び方
これから司法試験を目指す方は、やはりできるだけ合格率が高い法科大学院を選択したいと考えるでしょう。
ただ実際に入学先を選ぶときは、合格率に加えて以下の3点も加味して検討することをお勧めします。
各大学院の特徴
法科大学院の入学先を決めるときは、各校の特徴を踏まえ、自分の経験や目標に合った大学院を選ぶことが大切です。
例えば銀行員から弁護士への転身を考えるならば、自身の経験を活かせる金融法務に強い法科大学院を選択すると学習がはかどります。
あるいは将来的に渉外法務に従事したいと考えているなら、渉外法務教育に力を入れている法科大学院がお勧めです。
学習環境・交通の便
教室の充実度(双方向的な議論ができる教室か、模擬法廷が常設されているかなど)、自習室の環境、図書館の利用のしやすさなど、設備状況がどのくらい整っているのかも、法科大学院選びにおいて重要です。
また、就職支援を始めとする学生への相談・面談体制や奨学金制度の内容など、学習支援体制がどれだけ整備されているかもチェックしましょう。
さらに、交通の便も大きなポイントです。特に仕事をしながら法科大学院に通う場合、職場と自宅の両方から通える位置にある法科大学院を選ぶ必要があります。
あまりに遠い場所にある法科大学院だと通うだけで疲れてしまい、学習の気力を低下させる原因になりかねません。
教員の質
法科大学院の質の良し悪しは、そこで教えている教員の質と直結していると言っても過言ではありません。
基本的に法科大学院では教員と実務家が両輪となって指導していますが、大学院ごとに教員の質にはばらつきがあります。
研究者や実務家としては有能で名が知られている人を教員に据えている法科大学院であっても、結果として司法試験の合格率に結び付いていないケースが少なくありません。
もちろん、勉強する本人次第という部分は大きいですが、もし事前に教員の質が分かる情報を入手できるのであれば(親戚・友人に法科大学院の通学経験者がいるなど)、できるだけ情報を収集しましょう。
法科大学院卒業後のキャリア
司法試験に合格した場合は、卒業後は法曹としてキャリアを積むことができます。しかし法科大学院生の司法試験合格率からも明らかなように、全員が必ず合格できるわけではありません。
もし合格できなかった場合、卒業するとどのような道筋が考えられるのでしょうか。
法科大学院を卒業すると、法曹になれなかったとしても、「法務博士」の学位を獲得できるので、この学歴を活かした就職活動を行うことができます。
司法試験に合格していなくとも法務博士の保持者であれば、法律事務所や企業の法務部など活躍できる場は多いです。
まとめ
法科大学院は、偏差値の高い有名大学であるほど司法試験の合格率が高いということはありません。
法科大学院の選び方は、司法試験合格率の高さに加えて、法科大学院が持つカリキュラム上の特徴、学習環境や交通の便、教員の質、自身の歩みたいキャリアなどを含めて吟味しなければなりません。
最短で司法試験に合格できる予備試験ルートに比べると、法科大学院はやや回り道との印象を持たれることが多いです。
しかし、法律に関して幅広い分野を学べる、自分と同じ法曹を目指す友人を作ることができる、さらに卒業後に「法務博士」の学位を授与されるなど、法科大学院でなければ得られない利点は多いと言えるでしょう。
<参考>
・成蹊大学法科大学院
・同志社大学法科大学院
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