企業法務から考える前科・前歴者の処遇はどのようにすべきか?
他人のパソコンを遠隔操作してインターネット上に犯罪予告を書き込み、威力業務妨害などの罪に問われた片山祐輔被告(31)の裁判がいよいよ始まった。初公判で片山被告は、「事実無根です」と事件への関与を否定した。
今回の遠隔操作事件では、片山被告が逮捕するまでに4人が誤認逮捕され、警察のずさんな捜査、サイバー犯罪の取締りの難しさを浮き彫りにした。また、マスコミ各社に犯行声明が送られ、さながら劇場型犯罪の様相を呈し、世間の関心を集めた事件でもあった。このため裁判には注目が寄せられている。
片山被告が逮捕されると、先の誤認逮捕を受けて、「慎重に捜査すべき」と一部ジャーナリストから早々と注文が出されていた。裁判では、検察の意地と事件の関与を否定する片山被告の執念が真っ向からぶつかっており、上告審まで争われることが十分予想される。
遠隔操作事件は企業の法務部が注目?
裁判過程についてはひとまず見守るとして、片山被告について、企業法務の観点から考えさせられることがある。片山被告は初犯ではなく前科があったことだ。2005年、ネット掲示板に犯行予告を書き込み脅迫罪などで逮捕され、翌年には裁判で1年6月の実刑判決を受けている。ただ、ここで注目したいのは過去の事件についてではない。前科・前歴者の就職の問題だ。
犯歴があっても法務の観点から雇用は大事?
犯罪者の社会復帰はとても大切なことである。再犯を防ぐことにもつながるだろう。ただ、口で言うほど簡単ではない。前科があると偏見、差別がつきまとい、就職は難しくなりやすい。
もちろん、就職活動において法律的に前科があることを述べる義務はない。しかし、業種にもよるが求職者の犯罪歴の有無を確認したい企業は存在する。もし、犯歴を聞かれ、嘘をついて入社した場合、処分の対象になるのだろうか?
社員の前科が発覚するという事態はどの企業でも起こりうることだ。会社に多大な貢献をしている社員ならば、経歴詐称が発覚してもあまり問題にならないことが多い。就業規則に照らして判断することになるが、一概に懲戒処分の対象になるというものではない。そもそも、多くの企業は中途採用でも犯罪歴を確認しないし、調べることもない。
とはいえ、犯歴を重視している企業であれば、社員の前科が明らかになれば、罪名によって解雇事由になる可能性がある。女性の多い職場などでは性犯罪などの前科・前歴が明らかになれば、間違いなく問題になるだろう。なお、判例によれば、採用前に会社側が犯歴・罪名を知っていれば採用しなかったと推測される場合は、解雇が有効とされるようだ。
偏見を持つのは良くないが、前科・前歴者の処遇はきれい事では済まないこともありそうだ。企業にとって悩ましいところである。
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