3分でわかる最新人事コラム

第59回2009/12/07

「多様化するパワーハラスメント問題」

「パワハラ」という言葉は2002年頃にできた造語ですが、今では誰もが一度は聞いたことのあるワードとして広く浸透しています。しかし、社会現象として「パワーハラスメント」が取り沙汰され、広く認知されてきたにも関わらず、いわゆる体育会的な懲罰・暴力、または退職を強要するといったパワハラは度々世間のニュースを騒がせ、なかなか対策は進んでいないように見受けられます。またそれだけではなく、今日におけるパワハラは新たな諸問題をはらむ企業のリスクの一つとなっています。
今回は、そうした多様化するパワーハラスメントの問題を特集します。

 

パワーハラスメントとは 
パワーハラスメントとは、主に地位や立場が高い者が職務権限や人事権を利用して行う嫌がらせのことを指し、それが男女間の不快感を伴う場合は、セクハラと呼ばれ区別されてきました。パワハラと呼ばれるこの行為は、一般的に上司から部下への暴力などのことと認知されていましたが、最近では様々な環境変化によってパワハラも多様化しています。例えば、法改正によって増加した非正規社員への正社員からの差別やいじめが取り沙汰されています。その他、研究現場でのアカデミックハラスメント、部下から上司が受けるパワハラなど、一昔前にはパワハラとして全く想像すらされていなかった事象が出てきています。また、心理学者によって提唱されたモラルハラスメントは、「なんだそんなこと」と一蹴されかねない小さな嫌がらせ、不快な発言が継続・反復されることで被害者に重大なダメージを与えることで深刻な問題になっています。
そもそもハラスメントとは、最も簡単に翻訳すれば「不快感を与える・受ける」ということになり、与えた側の意図に関わらず被害者が「不快」と感じる行為を指します。
しかしセクハラのそれと違い、一般的にパワハラはただ「不快である」というだけではパワハラであると認定することが難しく、例えば上司から部下への正当な叱責であっても「不快である」と受け取られる可能性があり、標準的な指標や規制が難しい事象と言えます。
パワハラ問題の多くは、そうした線引きの難しさからきています。そして、そのことがパワハラ対応の理解不足や、それを許してしまう風土自体を作り出す要因ともなっていると言えるでしょう。

 

<パワハラと認識される主な事象>
□部下を周囲のメンバーの前で過剰に叱責する
□人事権の不当な行使、それについて示唆する言動
□部下の健康を危険にさらす
□部下を孤立させる など

 

しかし、暴力などに及ぶ場合は流石に看過できないとしても、経営者・人事担当者の方々の中には、パワハラという言葉に過剰感を覚え、『不快感の感じ方は人それぞれである』、
『個々人が乗り越えるべきことで、会社には関係ない』、というように会社としての介入を避けたいという見方をされる方が少なくありません。
しかし、パワハラを放置することは、実は企業の健全な経営にとって過大なリスクをもたらすことにつながるのです。

 

パワハラが企業にもたらすリスク
それでは、企業において無視できないパワハラによるリスクには一体どんなものがあるのでしょうか。
まずは、パワハラが引き起こす社員の労働力・労働の質の低下が、第一のリスクとして挙げられるでしょう。最近、増加傾向にある社員の「うつ病」もその一つと言えます。目に見えないところで蓄積され、進行するパワハラによって、社員のモチベーションや会社への忠誠心、仕事効率が下がるだけでなく心の病にまで発展してしまい、就業自体が困難となってしまうケースも最近では増えています。また、特定の社員が休職・退職するだけではなく、休職した社員の穴を埋めるため社員1人当たりの労働量が増加し、健全だった有能な社員が疲弊してしまうことも考えられます。こうした状況は会社の大切な財産である社員の退職、最悪のケースでは自殺を誘引することさえあります。特定の部署や支店において複数名に対するパワハラが横行する場合には、上記の連鎖によりメンバーが次々と休職や退職することも考えられます。ましてや、特定の専門性がある社員や部署においてこのようなケースが発生した場合、会社が提供してきたサービスの質の低下を招くだけでなく、事業の継続性まで危うくなるリスクもあります。
その他にも、被害者側からの起訴リスク、事態が社会に認知されることによる企業イメージの低下、商品・サービスの人気の低下など企業活動にとって致命的になりかねないリスクをはらんでいます。

 

<パワハラによる企業のリスク>
□健全・優秀な社員のモチベーション・仕事効率の低下
□社員のうつ病、うつ病による休職
□休職社員の発生による現存社員の労働過多、それによる労働の質の低下
□労働過多による、健全・優秀な社員の健康被害や退職のリスク
□サービス・生産性の低下
□訴訟問題へ発展するリスク
□起訴やメディア露出による企業イメージの損傷、風評リスク

 

それでは、こうしたリスクを回避するためにどのような対策を行う必要があるでしょうか。

 

パワハラへの対策
例えば、企業規模が数千人を超える大企業とよばれる組織では、近年セクハラやパワハラを含めた組織内の人的リスク・モラルを管理するために「コンプライアンス委員会」などと言った専門機関を設置することも珍しくありません。企業はそうした機関によって、職場風土、上司・部下それぞれの関係、その場面や意図などによって多様に捉えることができてしまうハラスメントの芽に対して組織としての標準化された指標を示すことが可能になり、また、そのハラスメントの危険が拡大もしくは深刻化する前にその芽を摘み企業リスクを減らすことを可能にしているのです。
ただ、大企業における特別機関のように、なんらかの対策チームを設置することは、ほとんどの一般企業にとっては現実的、かつすぐ行える対処とは言えません。
しかし、対策チームを設置したり予算をかけたりしなくとも、パワハラを許さない企業風土や、抑止する土台をつくることは可能です。例えば、経営者や人事担当者がこの問題についてきちんと理解を深め、適宜正しい対応をとることで、パワハラをストップさせることが可能になるでしょう。また、ある一定の管理職などにパワハラ予防の教育を行うことも有効です。繰り返し注意を喚起したり、社内にパワハラに関するモラル・判断の指標を明示したりすることが効果的な抑止、防止につながります。
何気ない、パワハラの芽ともいうべき段階から、社員が心を病んでしまうような段階に発展する前に改善を図ることも重要です。多くのコンサルティング機関のウェブページではパワハラに関するチェック項目を設けていますので、現在職場でパワハラが起こっていないかどうかをチェックしてみるのもよいでしょう。

 

<パワハラへの対策>
□社内での理解を深める
□加害者の立場や地位に配慮しすぎず、パワハラに対し確固とした対応をとる
□些細なこと、と受け取らずに初期の段階で対応を進める
□パワーハラスメントチェックなどで社内の現状を確認、意識を高める

 

まとめ
21世紀になって取り沙汰され始めた頃のパワハラ問題は、暴力といったわかりやすい行為が中心でした。これに比べ、現代のパワハラは多様な形をとり、発見されにくく、対応しにくいものとなってきています。また、昔はパワハラの対策とは被害者やその遺族が、社会に救済を求め、また更なる被害者がでないことへの願いから社会の認知度を広げていくことが主だった動きでした。しかし現代では、パワハラは組織が看過できない危機の芽として、ガバナンス問題の一部として重要な課題となっているのです。
「うちは大丈夫」「多少のパワハラは仕方がない」──そんな曖昧な態度はパワハラを助長させ、企業にとって取り返しのつかない問題に発展させる危険性をはらんでいます。これを機に社内のパワハラ意識を強化し、何がパワハラであるかという社内の意識共有を図ってみてはいかがでしょうか。

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