2023年08月15日

パワハラで退職するときにやるべきことは?転職時に伝えていいの?

管理部門・士業の転職

現在、職務上の地位を背景としたハラスメント行為、いわゆるパワハラが原因による退職が増えています。
精神的な限界を超える前に退職を選択することは、自分の身を守るという意味では合理的な判断といえるでしょう。

しかし「どこからがパワハラと言えるのか」「会社に自己都合退職を迫られたらどうすれば良いか」といった不安を抱えている方も多いかもしれません。

今回は、厚生労働省によるパワハラの定義や自己都合退職・会社都合退職の違い、退職する前にやるべきことなどを幅広く解説します。


管理部門・士業の転職

「パワハラ」ってどこから?

厚生労働省によるパワーハラスメントの定義

厚生労働省によると、職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものとされています。

1.優越的な関係を背景とした言動であって、
2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
3.労働者の就業環境が害されるもの

引用元:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」

「1」の優越的な関係とは、「職務上の地位が上位の者による言動・行動」や「同僚・部下からの集団による言動・行動」など、単独では抵抗できない状態を指します。

「2」の業務上必要かつ相当な範囲を超えたものとは、「業務上明らかに必要性のない言動」や「当該行為の回数・態様・手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動」などです。

「3」の労働者の就業環境が害されるものとは、その言動・行動によって、パワハラの被害者が肉体的・精神的苦痛を受けることです。「恐怖を感じさせる」「就業意欲を低下させる」といった行為も含まれます。

パワーハラスメントの6類型

厚生労働省によれば、職場でのパワーハラスメントは、「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過小な要求」「個の侵害」の6つに分類されます。

「身体的な攻撃」とは、殴打・足蹴りを行う、相手に物を投げつけるなど肉体的な苦痛を与えることです。ただし、誤ってぶつかってしまったなど、故意ではない場合はパワハラに該当しません。

「精神的な攻撃」とは、人格を否定するような言動や大声で威圧的な叱責など、主に言動に関することです。ただし重大な問題行動をした労働者に対して、強く注意をするなどのケースは、パワハラに該当しない可能性があります。

「人間関係からの切り離し」とは、長期間にわたって別室に隔離したり、全員で無視したりするといったケースが該当します。ただし、短期間集中的に別室で研修教育を実施するなど、適切な理由がある場合はパワハラに該当しません。

「過大な要求」とは、過酷な環境下で直接関係のない作業を命ずる、十分な研修を行わないまま業務に従事させるといったものです。対する「過小な要求」は、故意に誰でも遂行可能な業務を行わせるなど、労働者に本来の力を発揮させない行為などを指します。

「個の侵害」とは、職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりする「人権侵害」に関わる行為を指します。性的指向・性自認・病歴などを他の人に暴露することも、パワハラに該当します。


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退職理由は「会社都合」と「自己都合」どっち?

会社都合と自己都合の違い

会社都合と自己都合の違いはさまざまです。会社都合退職は、解雇やリストラなど、労働者の意志ではなく会社の決定によって退職する場合を指します。
会社都合退職の場合、条件を満たせば失業保険給付金の受給が可能で、受給資格が決定してから1ヶ月程度が受給開始の目安です。

自己都合退職は、労働者が自身の意志で退職を選ぶことです。具体的には、転職、結婚、出産、介護などの理由により退職を決めることが該当します。
自己都合退職の場合、原則としては直ちに失業保険の給付を受けられません。一定の待機期間(通常は3ヶ月)を経た後に失業保険給付金を受け取ることが可能です。

上記を見ても分かるように、会社都合退職の方が、失業保険給付金をすぐにもらえます。
他にも、退職金を全額受け取れる(自己都合退職の場合は減額されることがある)、履歴書に「会社都合により退職」と記載できるなどのメリットがあります。

パワハラが認められれば会社都合になる

失業給付の受給資格について、退職理由が「会社都合」「自己都合」になるかどうかの判断は、最終的にハローワークが行います。
会社は退職届や事情をもとに判断し、離職証明書をハローワークに提出し、ここでパワハラが認められれば会社都合になります。

自己都合での退職を迫られたときは

会社都合退職は、会社にとってのデメリットが大きいため、パワハラが日常的に行われているような場合でも「自己都合」での退職を迫られる場合があります。ただし「自己都合」扱いで退職したとしても、後で「会社都合退職」に変更できる場合もあります。

先ほども触れたように、退職理由が「会社都合」「自己都合」のどちらかを最終的に判断するのはハローワークです。
労働契約書・就業規則・タイムカード・賃金台帳・パワハラの様子を記録したレコーダーやメモなどが残っていれば、異議申し立ての内容を受けて、ハローワークが「会社都合退職」にしてくれる可能性もあります。


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パワハラで退職をしたくなったときは?

パワハラで退職をしたくなった場合、まずは信頼できる人にその状況を相談しましょう。
自身の認識が適切であるかどうか、また具体的に何をすべきかなど、外部からの意見を聞くことは非常に有益です。

相談先としては、「社内」と「社外」の2種類があります。社内にコンプライアンス担当や人事担当者がいる場合、その窓口に相談してみましょう。
専門的な視点からアドバイスを提供してもらえるため、自分では思いつかないような対処法のヒントをもらえる可能性があります。
会社によってはパワハラに関する相談窓口やホットラインが設けられている場合もあるため、組織構造も確認してみましょう。

社内での相談が難しい場合、または社内での解決が見込めない場合は、社外の相談窓口を利用するのも良いでしょう。
厚生労働省の「あかるい職場応援団」には、社外の相談窓口の一覧が記載されています。
「専門家が的確なアドバイスや支援を提供してくれる」「社外の人間なので本音を話しやすい」などのメリットがあります。

また、パワハラが重度である場合や、精神的に辛い場合は、一時的に休職することも考慮するべきです。
「相談」や「当事者と戦う」のも有効ですが、まずは自身の心身の健康を最優先に考えましょう。


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パワハラで退職する前にやるべきこと4選

パワハラで退職する前にやるべきことは、以下の4つです。

・パワハラの証拠を集める
・就業規則で退職を伝えるタイミングを確認する
・転職先を決めておく
・精神障害がある場合は労災申請する

それぞれについて詳しく解説します。

パワハラの証拠を集める

パワハラの証拠を集めることは非常に重要です。証拠がなければ、パワハラの実態を客観的に証明するのが難しくなります。
電子メール・チャットのログ・レコーダーやスマートフォンなどの音声データ・メモなど、具体的な証拠を保存しておきましょう。

就業規則で退職を伝えるタイミングを確認する

自社の就業規則を確認し、退職を伝えるタイミングを把握しておくことも重要です。通常、民法第627条に基づき、退職を2週間前までに通知することが求められますが、自社の就業規則で特別な規定が設けられている場合もあります。基本的には、即日退職は不可です。

転職先を決めておく

パワハラで退職する前に、次の仕事や職場をあらかじめ決めておくことが理想的です。
無計画に退職してしまうと、なかなか次の就職先が見つからず、新たなストレスを生む可能性もあります。
無理のない範囲で、次のステップを計画しておきましょう。

精神障害がある場合は労災申請する

精神的な障害を引き起こすほどのパワハラを受けていた場合、労災の申請を検討することも必要です。
精神障害を客観的に証明するには、医師の診断書が必要となるため、あらかじめ自身の精神状態・健康状態について医師と相談しておきましょう。


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パワハラで退職する際に会社に請求できるものは?

パワハラで 退職する際に 会社に請求 できるものは?

パワハラで退職する際に会社に請求できるものは、主に「慰謝料」「退職金」「未払いの給与・残業代」の3つです。

パワハラにより退職を余儀なくされた場合、パワハラが原因で精神的苦痛を受けたとして、慰謝料の請求が可能です。
しかし、慰謝料の請求が認められるためには、「パワハラが実際に発生したこと」「それによって精神的苦痛が生じたこと」「その精神的苦痛が退職を引き起こしたこと」を明確に証明する必要があります。
慰謝料の相場は50万円〜100万円程度です。

また、パワハラにより退職する際は、退職金の受け取りも可能です。
退職金は、就業規則や労働契約などによってその支給基準や額が決まります。
自己都合退職と会社都合退職で支給される金額が異なる場合もありますが、一般的には勤続年数や職務内容により計算されます。

慰謝料・退職金と一緒に未払いの給与・残業代も請求しましょう。
具体的な証拠としては、給与明細、労働時間の記録、残業の指示などがあります。
そもそも未払い給与や残業代については、労働基準法にもとづく権利であり、退職理由やパワハラの有無に関わらず請求可能です。


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転職理由で「パワハラを受けた」と答えても良いの?

結論からいうと、直接的な退職理由としてパワハラを挙げると、面接官はネガティブな評価をする場合があります。
パワハラを受けたのが事実であっても、面接官は「志望者が問題を持っているのではないか」「何かあるとすぐに退職するのではないか」と懸念するかもしれません。

もちろん、意図的な嘘をつくことは厳禁ですが、退職理由は面接官がポジティブな評価をするような回答をするのが無難です。
「将来のことを考えて」「自分のスキルを向上させたいから」「キャリアアップを図りたいから」といった理由であれば、就職後も努力し続けてくれるとの印象を面接官に与えられます。


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まとめ

厚生労働省によれば、「優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるもの」はパワハラに該当するとされています。

パワハラが認められれば会社都合退職になりますが、会社から「自己都合」での退職を迫られる場合もあるため、日頃からパワハラの証拠を集めておくのが重要です。

面接時に、パワハラを直接的な退職理由として話すと、面接官からネガティブな評価を受ける可能性があります。退職理由については、「スキルアップ」「キャリアアップ」など、なるべくポジティブなものを選びましょう。

管理部門・士業の転職

この記事を監修したキャリアアドバイザー

佐藤 颯馬

大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
法律事務所・会計事務所・監査法人・FAS系コンサルティングファーム等の士業領域において事務所側担当として採用支援に従事。その後、事務所側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当。

会計事務所・監査法人 ・ 法律・特許事務所 ・ コンサルティング ・ 金融 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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