貧乏弁護士が増えている?「金持ち=弁護士」の構図が崩れ始める。
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医師と並んで、人並み外れた高収入を得られる国家資格として知られていた弁護士ですが、近年ではその特権階級的なイメージも実態と懸け離れ、「ジリ貧」といわれるように低所得、な貧乏弁護士が増えています。このような厳しい時代に、弁護士は一人の職業人として、どのように仕事や収入と向き合うべきでしょうか。
弁護士は、収入目当てで目指す職業ではなくなった
かつて、弁護士には「一発逆転」の職業という側面があったのも否定できません。1991年にフジテレビ系列で放送された連続ドラマ『101回目のプロポーズ』では、武田鉄矢演じる冴えないサラリーマンが、浅野温子演じるヒロインに求婚する切り札として、会社を辞めて退路を断ち、必死に司法試験合格を目指すシーンが、物語のクライマックスで描かれました。
当時であれば、司法試験合格者は年間500人程度で、そのうち約8割が弁護士になるとしても、その職能に関する希少価値は依然として高かったのです。よって、同業者間のクライアント獲得競争も少なく、普通程度に働いていても貧乏になるどころか高収入が約束されている職業でした。
一方で、現在では法科大学院に通うためにまとまった額の授業料が必要ですし、その上、司法試験予備校に通って講座を受講したり、答練や模試も受験すれば、さらに費用がかさみます。
また、司法試験合格後、司法修習期間中の「修習専念資金」は、国から貸与されていますので、弁護士になった後に返還する義務があります(なお、修習71期以降の修習専念資金は、給付制となっています)。その為、弁護士を目指す前はどちらかというと倹約を意識したり、"貧乏"な時期を過ごされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
加えて、弁護士を名乗って仕事をし続けるために、所属弁護士会に毎月、会費を支払わなければなりません。
弁護士人口の増加で同業者間の競争が激化し、その平均年収が減少傾向にある一方で、弁護士稼業の固定費は相当高額にのぼるのです。
稼げる弁護士と稼げない貧乏弁護士の格差も広がっています。幅広く密度の濃い人脈ネットワークを構築し、法や判例に囚われすぎず、クライアントのために柔軟な立場で交渉を進められる弁護士は重宝されます。あるいは新しいビジネスモデルの発想と実行ができる弁護士にも、高収入を得られるチャンスがあるでしょう。
その一方で、クライアントの問い合わせに決まりきった答えしか出さない弁護士や、黙々と書類作成を中心に没頭しがちな弁護士は、高収入を得づらく、結果的に貧乏弁護士となってしまいます。弁護士は必ずしも、資格があれば裕福でいられる職業ではなくなっているのです。
貧乏弁護士は本当に多いのか?「ネガティブ報道」に翻弄されてはならない
法律事務所への就職がうまくいかず、独立開業するにも事務所用のオフィスを借りる段取りが間に合わず、やむをえずに自宅で開業する「ケータイ弁護士」や、飲食業のパートタイムなど法律とはまったく関係のない副業をしなければ生活できない「アルバイト弁護士」などが、Web記事や週刊誌などで採り上げられることがあります。いわゆる「貧乏弁護士」の実例が存在するのは間違いないでしょう。ただ、弁護士のような社会的エリートの職業人が貧乏生活へと「転落」していくような物語は、大衆の興味をひきつける話題でもあります。その為、一概には言えませんが読者からのウケを狙うために、記事の内容が実態よりもやや誇張されていたり、尾ひれを付けたりすることもありうるのです。
よって、これから法曹の世界に入ろうとする新人の皆さんは、こうしたネガティブ報道を決して鵜呑みにしてはなりません。もちろん、就職活動に失敗して「即独」せざるを得なかったり、弁護士としての経営が軌道に乗らず、貧乏弁護士に陥ってしまうピンチに備えて、稼ぎのセーフティネットとして、クライアントの集客策をいくつも用意しておく必要はあります。
弁護士に関する誇張された報道は気にしない態度を貫くことが重要ですが、弁護士が昔ほど高収入を得にくい職業になり、貧乏弁護士も増えつつあるという事実にも、正面から向き合わなければなりません。
他人を救う前に、まずは自分を救うこと
「法律家として、社会の矛盾に虐げられた人々を救いたい」という大きな志に反して、目先の収益を上げることに躍起にならなければならない時期もあるでしょう。しかし、自身の生計を満足に立てられない弁護士が、困っている他者に手を差しのべることが倫理的に良いことなのかと問うと、疑問に思えます。
現に、経営に苦しんでいる弁護士が、その社会的信頼を悪用し、クライアントの資産を横領する事件が後を絶ちません。
かつては「三百代言」などとして蔑まれてきた弁護士の社会的信用力は、長年にわたり、時代を超えて、先人が必死になって築き上げてきたものです。その信用をただで食い物にする弁護士がいる限り、弁護士という資格の威光に、再び陰りが覆う事態にもなりかねません。
弁護士として弱者を救済したいと願うのなら、まずは毎月の経営を少しでも安定させる努力をし、収入を確保する道を整えてからでも遅くはありません。決して焦らずに、まっとうな道を進んでいただきたいです。
まとめ
弁護士の業界は、厳しい時代を迎えて久しい昨今ですが、そんな中でも、世間の平均を遙かに超える高収入を得ている弁護士は少なくありません。若手でも、そのチャンスはあります。
また、弁護士のように困っている人々を助けて、直接、感謝してもらえる職業は、そう多くありません。貧乏弁護士にならないようにすることや収入アップばかりを望まず、かけがえのない弁護士の職責に愛着と充実感を見いだすことができれば、地道に末永く続けていけるでしょう。
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