法科大学院修了生のキャリアアドバイザーが語る!ロースクール回顧録
私の母校である横浜国立大学法科大学院が、2019年度から学生募集を停止しています。ピーク時には74校あった法科大学院も、これで38校となり、ほぼ半数になってしまいました。
要因としては、法科大学院設立時に予想されていた法曹需要の拡大が当初の予想とは大きく異なったことや、司法試験の合格率も当初の想定より低い水準となり、それに加えて不合格後のキャリアパスも不明確であったことなど、諸々あると思います。
しかし、社会人になる前は法科大学院生であった私自身に関して言えば、法科大学院で過ごした日々は、その後の人生において大きな糧になったとはっきりと言えます。
近年は法科大学院修了生の就職環境も改善してきており、多くの企業が、司法試験の合否に関わらず、法科大学院修了生の採用に積極的な姿勢を示しています。
法科大学院をめぐっては、ネガティブな面にスポットをあてた報道が多いですが、ポジティブな面にもスポットをあててみたいと思いました。
そこで今回、これから法科大学院への入学をご検討の方や法科大学院生の方に向けて、法科大学院生の1日や、ロースクールでの思い出、法科大学院修了後の進路についてお話しさせていただきます。
ロースクールの1日
法科大学院生としての当時の平均的な1日の過ごし方は、主に以下のようなものでした。
<平日>
・7時:起床
・8時:登校→自習室で講義の予習・復習
・9時~18時:講義受講(2コマから3コマ/1コマ90分)
※講義がない時間は、講義の予習・復習(集中力が切れた時はラウンジで雑談)
※12時~13時:お昼(学食)
・18時~19時:夕食(学食ないし近くの食堂)
※気分転換が必要な時は長びくこと多々
・19時~22時ないし23時:自習室で講義の予習・復習
・22時~23時:帰宅
※講義の準備が終わらないときは深夜1時~2時くらいまで残ることもあり
<休日>
・8時起床
※疲れによっては12時近くまで寝ることあり
・9時:登校→自習室で講義の予習・復習(集中力が切れた時はラウンジで雑談)
・18時:帰宅
※期末・中間テストの期間は、休日も22時~23時まで自習室で学習
こうしてみると、よくこんなに勉強していたなと思います(もっと勉強していた仲間からみれば、もっと勉強しろよと言われるであろう箇所も散見されますが...)。
社会人になっても長時間働くことは全然苦ではなかったですが、法科大学院生時代の生活が自分を鍛えてくれたと思います。
ロースクールの思い出~気分転換方法は?恋愛事情は?~
法科大学院にいる間は、司法試験の合格を目指して毎日勉強しているので、気分転換が必要でした。しかしながら、基本的に法科大学院生にはお金がありません。
そこで、私が気分転換としていたのが、ラーメン屋さん巡りです。
母校のある横浜は、「家系(いえけい)ラーメン」(※注1)の聖地であり、ビックスクーターを所有していた友人とともに、横浜中の家系ラーメンを制覇しました(総本山である「吉村家(よしむらや)」もお勧めですが、個人的なナンバー1は、上星川の「寿々喜家(すずきや)」です)。
また、法科大学院生同士の交際も活発でした。
同級生と一緒に過ごす時間はとても長く、勉強や進路の悩み相談も含め、本当にいろいろなことを話しますし、その分距離も近くなります。
結果として、交際に発展するケースはかなり多く、卒業後に結婚に至るケースも複数ありました。
※注1:家系ラーメンとは、横浜発祥の豚骨醤油ベースのラーメンであり、「吉村家」というラーメン店を総本山とするラーメン店群のことをいう。屋号に「○○家(や)」と付くことが多いためこのように呼称される。基本的な具は、ホウレンソウ、海苔、チャーシュー。麺の固さ、味の濃さ、油の量などは個別オーダーが可能。濃厚でコクのあるスープはクセになり、毎年多くの中毒者を生み出している。
法科大学院卒業後の進路
法科大学院修了後の進路は、司法試験に合格した場合と不合格の場合で異なります。
まず、合格した場合は、弁護士、検察官、裁判官のいずれかのキャリアを選択することになります。
さらに、弁護士の場合は、法律事務所に勤務するか、企業やその他のキャリアを歩むかを選択します。
司法試験に合格した私の友人の多くは、法律事務所への就職を選択しました。企業に就職した人もいましたが、当時はまだまだ少数でした。
しかし、近年は弁護士に対する企業の採用ニーズが高まっています。日本組織内弁護士協会(JILA)の調べによれば、2017年12月時点で、2,051名が企業内弁護士として就業されています(弁護士全体の約5%)。
司法試験に不合格となってしまった場合は、司法試験受験を継続、公務員(例:裁判所事務官、県庁・市役所職員etc.)、企業(多くは法務職)、法律事務所(パラリーガル)といった進路の選択肢があります。
不合格となってしまった私の友人の多くは、公務員と企業内法務を選択していました。また、理系的なバックグラウンドを活かして特許事務所で特許技術者となった友人や、法律事務所でパラリーガルになった友人もいました。
ちなみに私自身は、法科大学院生の就職環境に問題を感じ、人材業界に飛び込み、法務領域に特化したキャリアアドバイザーとして現在に至ります。
法科大学院生の現在の就職環境について
法科大学院生の現在の就職環境は、過去に前例がないほど良い市況感となっています。企業不祥事等の影響もあり、各社がコンプライアンスやコーポレートガバナンスの強化に積極的です。
景気もいい状況が継続しているため、若手人材の獲得に多くの企業が積極的な姿勢を示しています。
司法試験に合格されている司法修習生だけでなく、司法試験に不合格となった法科大学院生も、多くの企業からオファーが出ています。
MS-Japanでは、法科大学院生の就職活動のサポートも行っております。企業への就職をお考えの方は、ぜひご相談ください!
おわりに
働き方やキャリアパスが多様化した現代において、共通の目標に向かって仲間と切磋琢磨し、濃密な時間を過ごす機会はなかなかないといえます。青臭いようですが、私にとって法科大学院生として過ごした日々は青春そのものでした。
仲間と笑いあい、励ましあい、時には衝突し、いろんな涙を流した日々は、今の自分を支えるかけがえのない時間です。
法科大学院の存在意義が問われている状況であるからこそ、これから法科大学院に進学される皆さんには、社会に出てからも法科大学院修了生として活躍して欲しいと思っていますし、法科大学院生として在学中の方も、ぜひ充実した日々を過ごして欲しいと願っています!
<参考>
・日本組織内弁護士協会(JILA)- 組織内弁護士の統計データ
(文/キャリアアドバイザー)
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