新人税理士が陥りやすいミス5選
税理士は、企業など納税義務者の依頼を受けて、その収支を集計し、確定申告などの納税手続きを代行する職責を担います。しかし、この業務に慣れていなければ、ミスを犯し、依頼者(クライアント)に損害を与える恐れがあるのです。この記事では、新人税理士が陥りやすいよくあるミスをまとめました。
計算ミス・入力ミス
プロの税理士とはいえども、ミスを一切犯さない人はいません。数字を集計操作する仕事ですので、四則演算や入力ミスは付きものです。
計算量が膨大になっていたり、複数のスタッフで手分けしていたりすると、計算や入力のミスによって、最終的な数字が合わない事態に陥るリスクがあります。最初に遡って、再度一つ一つ、数字を拾って計算し直さなければなりませんし、ミスの原因を探す手間や時間がまるごと無駄になってしまいます。もし計算が合っていれば、その時間に別のクライアントの案件に着手できますから、大きなミスは機会損失、すなわち事務所の経済損失にも繋がるのです。
入力や計算のケアレスミスを無くすことはもちろん、ミスが発覚したときにも、効率よく矛盾のないように訂正する技術を身につけられると、税理士としてのスキルアップに繋がります。数字の帳尻を合わせるには、会計処理のしくみの本質を理解している必要があるでしょう。
収集した資料のミス
クライアントから提出された資料についても、検討が不十分であれば、納税額に過不足が生じるミスに繋がりかねません。そもそも、経費にできない使途の領収書が混ざっているにもかかわらず、その領収書の額面を経費計上することは、税務調査や修正申告、追徴課税の必要性を生じさせ、クライアントに不要な負担を掛けてしまいます。
経費にできないことを見過ごさず、その領収書を受け付けない注意力や基礎知識をしっかりと身に付けなければなりません。
また、クライアント企業が行った給与計算や社会保険料の計算などにミスがある場合があり得ます。元データまで裏を取って必ずチェックし、不備があれば指摘するのも税理士の仕事です。中小企業の中には、故意や過失にかかわらず、負担すべき租税や保険料を負担していないこともあり得ます。クライアントを保護するためにも、国や地方自治体に納めるべき租税類を納めていない事実は、書類上で見抜いて指摘しなければなりません。
クライアントの話を鵜呑みにしたミス
領収書のチェックで、経費の使いみちについて不明確な点があれば、クライアントに問い合わせて事後的に確認する必要があります。このときに、領収書を経費として計上したいがために、クライアントが誤解や思い込みに基づいて、事実と異なる説明をする事態もあり得るのです。
もし、その説明と実際の使いみちとの間に食い違いがあれば、税務調査の際にその点が指摘され、経費として計上されず、修正申告ないし追徴課税が生じる恐れがあります。
そのような負担のリスクをあらかじめ回避するのが、税理士の役割です。クライアントの説明と、資料での客観的な記載に齟齬や矛盾があれば、その点に目ざとく気づくスキルが求められます。
税制改正を知らないことによるミス
税法は、毎年のように改正が行われます。税法を建物に例えれば、増築に増築を重ねて、構造が複雑になっている、使いにくいビルディングのようなものです。
税制の素人では全体像を把握することが極めて難しいので、プロフェッショナルである税理士の鋭い目とアドバイスが必要となるのです。
しかし、勉強不足や不注意によって、税制改正に気づかないまま手続きを行うことは、クライアントの不利益に直結する恐れがあります。税理士のミスによって、課税当局からのペナルティを直接受けるのは、クライアント自身です。ミスが重大であれば、クライアントから民事上の損害賠償を請求されるリスクもあるのです。
新人税理士は、業務経験が足りない分、税制改正に対して鋭いアンテナを張り、徹底的に勉強や情報収集を続けなければなりません。報酬を受け取っている以上は、クライアントが思わぬ不利益を被らないよう、専門家としての職責を果たし、細心の注意を払いましょう。
現場に足を運ばなかったミス
特に不動産が課税対象になっているケースで、登記記録など紙の資料だけを鵜呑みにして処理すれば、間違いを起こす危険性があります。
実際に現場を訪れ、土地や建物を実際に測定すると、面積などの数値が違っていたり、境界線が異なり、地図と整合しなかったりすることがあり得ます。
たとえ事務処理量がかさみ、多忙を極めていても、不動産だけはできるだけ現地に赴いて、実態を丹念に把握する地道な取り組みが、クライアントの利益に繋がるはずです。
まとめ
税理士には、税制のプロフェッショナルとして、クライアントのために細心の注意を払う、
善良なる管理者の注意義務が法的に課されています(民法644条)。新人といえども、その義務を免れることはできません。税理士に限ったことではありませんが、新米の専門家には、経験量が足りない弱みを、勉強量でカバーしようとする意気込みが必須です。
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